日本史で重要な役割を果たしてきた天皇。歴史学の進展によってその実像もしだいにわかってきた。
天皇は、いつ、どのような背景で成立したのか。現在では、7世紀後半、律令国家の形成期に位置づけられる天武天皇と、その皇后、持統天皇の時代に、従来の大王号から天皇号への転換がなされたとする説が有力である。
旧来の大王号は、ほかの王族や豪族にも「我が君」や「おおきみ」の呼称が用いられている例があることから、君主号として未成熟だった。対して天皇号は、天皇をほかの君主と明確に区別された排他的存在に変更した点に特徴がある。中国の「皇帝」と対置することで、対外的にも皇帝の冊封(さくほう)を受けた新羅王(しらぎおう)より優位な「東夷(とうい)の小帝国」の君主として自らを位置付けようとしたのだ。
空間と時を支配する天皇
とくに画期的だったのは、天皇が「空間と時間の中心」に位置する君主として打ち出された点だ。天皇という言葉は、北で動かない北極星を意味するとの説が有力であり、空間の中心を象徴する。この思想と深く連関するのが、都城(とじょう)(都としての地域)と大極殿(だいごくでん)の成立である。
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