メディアを使った仕掛けで民心を掌握し、悲願の改憲を狙う首相。野党の出方は。
参議院選挙の結果を受けて、安倍晋三首相が秋の内閣改造、自民党役員人事を通して政権運営の仕上げの図をどう描くかに注目が集まることになる。政治の話題が夏枯れする時期、安倍首相は亡父の墓参りに行き、憲法改正の議論を進める決意を表明した。その少し前には、小泉進次郎・衆議院議員が有名アナウンサーとの婚約を首相官邸で記者発表した。いささか牽強付会だが、この2つを結び付けると、これからの安倍政治の方向性が見えてくる。
参議院選の結果をどう解釈するのも自由だが、「少なくとも議論は行うべきだ。それが国民の審判だ。野党にもこの民意を正面から受け止めてほしい」(選挙直後の安倍氏の記者会見)とまで言うのは我田引水の度が過ぎる。自民党は単独過半数を失い、与党に日本維新の会を足した改憲勢力の議席も3分の2を下回った。国民は憲法改正については慎重であり、選挙後の世論調査もそれを示している。
首相の改憲への執着は、政権の求心力を作るための強がりであろう。一面では、米トランプ外交や世界経済の混乱への対応などの、厄介な政策課題からの逃避であろう。改憲に向けて国民民主党から数名を引き抜けば、3分の2を確保することも不可能ではない。ただし、そうなったら憲法改正は与野党間のとげとげしい対決の争点となり、国民投票での可決は見通せない。そこで提起される改正案は、9条のようなイデオロギー的対立を招かないものとなる。新しい時代の新しい憲法などと言ってムードを作り、憲法改正を成就するという遺産を残す。これが現段階での改憲構想ではないか。
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