娘のところに訪れたかんぽ職員の説明はにわかに信じがたい内容だった。

女手一つで子どもを育て、子どもが巣立った後は山あいの小さな町で個人商店を切り盛りしていた。シズヱさん(仮名・89)の元に2人の郵便局員が通ってくるようになったのは、少なくとも30年以上も前だという。
「郵便局の保険に入ってくれんか」「自分たちには割り当てがあるけん、入ってくれ」「損はさせんから」
訪ねてきた局員は店先でそんな話をする。「割り当て」とはどうやら営業ノルマのことらしかった。何度も断ったが、昼過ぎくらいに来て暗くなるまで帰らない日もあった。
根負けして、「入る」と言うと、いつのまにか保険に加入させられていた。シズヱさんにはサインをした覚えも、印鑑を押した覚えもない。「変だな」とは感じたが、「郵便局の保険いうたら儲かるんじゃろ」と気にもしなかった。
そんなことを繰り返しているうちに、あるときから局員は「シズヱさん、あんたの枠はいっぱいになったけん、子どもさんでもお孫さんでもいいけん、入っといてくれ」と言うようになった。
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