受験を知らない子供たち、懸念は学力低下より突破力
文科省の調査研究員会では、高校段階の学力到達度を測る共通テストである、高大接続テスト(仮称)のあり方を検討している。基礎的な教科全般について教科書で扱われている問題から出題、高校在学中に複数回実施などが骨子という。
現状、高校卒業時の学力把握は大学が個別に行う入学試験に委ねられている。そのため、大学進学を希望しない者やAO・推薦入学者は結果的に学力到達度が把握できない場合が多い。また、入試においても少科目数化が進んだため、高校の必修科目を履修せずに進学する学生も少なくないと指摘される。高大接続テストはこれらに対する改革案といえるが、現行の大学入試センター試験の改革とともに議論されるべきである。欧州主要国では、個別の入試ではなく、高校卒業と大学入学資格試験を兼ねた共通テストがあり、これで学力を把握したうえで、個別大学が面接や作文などを行い選抜していく。
「受験勉強は必要悪」か
過度の受験競争の見直し、大学全入時代における学習プランの多様化などが、AO・推薦入試をはじめとした試験形式変容の背景にあったことはいうまでもない。一方で、高大接続テストなどの実施により基礎学力低下に一定の効果が得られれば、今後AO・推薦入試の長所を引き出していくことも有益である。
しかし、「受験勉強に鍛えられた」とノーベル化学賞を受賞した根岸英一・米バデュー大学特別教授は語った。前出の櫨氏は「受験勉強は必要悪。試験があるから勉強する。繰り返し勉強した経験は受験時しかない」という。1月15~16日に大学入試センター試験が実施される。全国で約55万人が受験する。あのときの緊張感、高揚感をいま一度思い出すとき、大人になるうえで欠くことのできない通過儀礼であったと振り返る人は少なくないのではないだろうか。
(シニアライター:野津 滋 =週刊東洋経済2011年1月8日号)
※写真はイメージです。本文とは関係ありません。撮影:尾形文繁
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