短期的な成果のみ求める今の風潮では、今後ノーベル賞はゼロになりかねない。受賞した3人が一斉に警告を発する。
激しい競争だけがいい研究を生むのか
生理学・医学賞|東京工業大学 栄誉教授 大隅良典
私は折に触れ、今の時代に私が研究者を目指していたら、おそらくはじき出されていただろうと話してきた。若い頃はなかなか論文を出せず、エリート街道を歩いた研究者ではなかったからだ。それでも余裕のあるいい時代だったので、自由に研究をやらせてもらい、同じテーマを長年続けてくることができた。
しかし、現代の研究者はとてもそんな余裕を与えられていない。この10年ほどで研究環境は大きく変わった。研究者は、安定的なポストに就けるか、研究資金が途絶えないか、そんな恐怖心に駆られながら、結果を出すためにもがき苦しまなければならなくなった。国の基盤的経費が減り、競争的資金を獲得し続けなければ研究もできなくなったので、すぐに結果が出る流行の研究に飛びつく研究者が増えた。未知の世界に踏み出すよりも、すぐに結果の出る、さらに役に立つと思える分野の研究を目指すようになった。
「可能性より実績」に懸念
日本の競争的資金制度にも問題がある。基礎科学を支える競争的資金は科研費だが、その審査はそれまでの発表論文数や掲載誌など、研究内容の可能性よりも過去の実績を重視することが多い。近年さまざまな民間財団による研究助成がなされているが、それも科研費の採択と同じように実績で判断される傾向がある。それでは今の日本の研究状況は変わらない。
この記事は有料会員限定です。
東洋経済オンライン有料会員にご登録いただくと、有料会員限定記事を含むすべての記事と、『週刊東洋経済』電子版をお読みいただけます。
- 有料会員限定記事を含むすべての記事が読める
- 『週刊東洋経済』電子版の最新号とバックナンバーが読み放題
- 有料会員限定メールマガジンをお届け
- 各種イベント・セミナーご優待
無料会員登録はこちら
ログインはこちら