「海外から帰ってきたら状況が一変していた。常勤職に就くのがこんなに難しいとは当時は思わなかった」。国内の研究機関で生物系の特別研究員として働く40代女性のAさんは肩を落とす。
Aさんは2000年に博士号(理学)を取得し、米国で4年強の研究生活を送った。研究職に就くなら早めに海外経験を積んだほうがいいとされていたためだ。「1990年代前半までは海外から帰国した後、大学で助手(現、助教)となり、そのままアカデミアの世界に残れるのが普通だった」(Aさん)。
ところが90年代後半に流れが変わった。国は科学技術立国を掲げ、大学院重点化を推し進めた。博士課程修了者数は91年から00年の間に2倍に膨らんだ。
任期制が研究劣化の元凶だ
他方で、博士の受け皿となる大学教員の採用数は、国立大学の運営費交付金が減らされるなどで減少傾向に転じた。彼女もある国立大学のポストを得たが、それは5年任期の「特任助手」だった。
かつては教授に至る終身雇用ルートの入り口だった助手も、助教と名前を変えたこの頃から、任期付きが一般的になった。Aさんは特任助手(途中から特任助教)の任期終了後、複数の研究機関で任期付きの研究員を務め、現在の「特別研究員」もやはり任期付きだ。
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