バブルに踊ったのは何も銀行や不動産業だけではない。総合商社の伊藤忠商事も国内外で不動産関連投融資を膨らませ、それが不良資産となってしまった。加えて、損失処理を先送りし傷口を広げてしまう。損失処理の必要性について早い段階から意見していたのが、1998年4月に社長に就任することになる丹羽宇一郎氏だった。
現場の見通しは甘くなる
損は想定の3倍に
おそらく90年代半ばごろだが、経営の重要事項を決める副社長会で発言したことをよく覚えている。
「私は長く相場(穀物トレーダー)をやってきたので、やばいと思うときは目をつぶってポジションの半分を損切りするのが相場の鉄則だと考えています。傷が深くなるので、とにかく半分切ってください」。ぱっと手を挙げて、そう訴えた。
当時は社長を補佐し会社の事業全体を見る業務部長として副社長会に出席していた。不良化したバブル期の資産の早期処理を小生意気にも訴えたのだが、案の定、経験豊かな副社長たちに「何を言うのか」と怒られてしまった。このときに初めて、会社に影響を与えるには常務くらいにはなる必要があると思った。
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