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構造転換の遅れがバブルを招いた 野口悠紀雄氏に聞く

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早稲田大学ファイナンス総合研究所 顧問 野口悠紀雄

地価も株価も天井知らずで上がり続け、それがずっと続くと皆が錯覚したバブル時代。日本の地価バブルを誰よりも早い段階で指摘していた野口悠紀雄氏に、現代人がバブル史から学ぶべき教訓を聞いた。

早稲田大学ファイナンス総合研究所 顧問 野口悠紀雄
のぐち・ゆきお●1940年、東京生まれ。65年東京大学工学部卒業後、大蔵省入省。72年、米イェール大学で経済学博士号を取得。一橋大学名誉教授。2011年から現職。著書は『戦後経済史』(小社刊)など多数。(撮影:尾形文繁)

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Q. 日本経済にバブルが生じた原因は何か

一般的にいわれるのは、金融政策。プラザ合意によるグローバルな政策協調でドル安すなわち円高となり、日本の景気が悪化した。そこで日本銀行が景気刺激のため公定歩合を歴史的な水準まで引き下げた。この金融緩和であふれたマネーが地価の高騰を招いたというもの。

そのメカニズムは否定しないが、背後には戦後日本の金融体制の大きな構造問題があったと私は考えている。その体制とは銀行を中心とした間接金融の仕組みで、国民から預金の形で貯蓄を吸い上げ企業に融資するものだ。高度成長期には有効に機能したが、1970年代の末から80年代に行き詰まりに直面する。企業の設備投資意欲が低下した結果、カネ余りとなったからだ。

このときに必要だったのは、間接金融体制を大きく転換することだった。事実そうした議論が日本長期信用銀行など一部の銀行内部でも行われていた。ところが実際になされたのは安易な対処で、銀行は余ったカネを不動産投資に振り向けた。そして地価が上昇していった。

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