【産業天気図・10年10月~11年9月】先行きの悲観論は後退も、多くの業界が曇天模様に
2010年秋までくすぶっていた日本経済の先行きをめぐる悲観論は、ここに来てやや後退したようだ。11月に米国が金融緩和第2弾(QE2)に踏み切るなど、主要各国は金融緩和策を基本的に継続する方針。来る11年には景気回復の踊り場こそあれ、二番底は回避できる--。そんな安堵感が市場に漂っている。果たしてこの状況は、一連の大型政策出動から成功裏にソフトランディングを迎えつつあるといえるのか、それとも日本経済の緩慢な衰退の始まりなのか。産業界は危機一服後に続くモメンタムを見極めようとしている。
注目業種のひとつは自動車業界。「会社四季報」記者の見立てによると、自動車業界の景況感は10年10月~11年3月が「雨」だが、続く11年4月~9月には「曇り」へ一段改善する見通し。足元の厳しさの要因は、ひとつは急激な円高。もうひとつが国内のエコカー補助金失効による需要の反動減だ。11年4月以降は新興国需要に牽引され、台数自体は全体では伸びが見込まれる。ただやはり、為替水準がどこに落ち着くかで収益力は大きく左右される懸念があり、かつての利益水準に戻るには相当の時間がかかりそうだ。
電機産業は先行き不透明感がさらに色濃い。10年10月~11年3月の「晴れ」に対し、11年4月~9月には「曇り」へ一段後退すると記者は予想している。来春までは国内の家電購入奨励策・エコポイント制度が消費を誘うが、政策が剥落した後は韓国などの海外競合メーカーとの厳しい競争が待っている。特にこれまで最大の需要減だった米国市場が回復遠く、当面は新興国市場の開拓が必須課題に。となると価格競争も一段と激化が予想され、主要各社の業績回復も足踏みしそうだ。
内需産業では空運業界に注目したい。景況感は一貫して「晴れ」。景気回復に伴う個人旅行やビジネス移動需要の回復ばかりでなく、10年秋の羽田空港の国際線拡張が好材料となっている。日本国内の既存の「ルール」を弾力運用することで需要が創出できる好例だろう。
ただ、国内消費の回復は決して力強くはない。たとえば、「ユニクロ」のファーストリテイリングに代表されるアパレルは、終始「曇り」止まりと予想されている。低価格を強みにしてきた企業さえ、既存店の伸び悩みがここに来て顕著だという。食品も足元の「晴れ」が、11年4月以降は「曇り」に後退する見通し。10年の世界的な異常気象と投機マネーの流入で、原料である小麦、大豆などの価格が高騰しているのが要因だ。
政府が発表した12月の月例経済報告は、基調判断が景気回復が停滞する「足踏み」のまま据え置かれた。企業には大量の資金が積み上がったままだが、大胆な投資や企業買収の動きには繋がっていない。失業率が5%に達する中、国家・地方財政や社会保障に対する不安も消えず、消費者心理も改善しそうにもない。日本産業界は新年、次の成長局面を迎えるための処方箋を見つけることができるだろうか。
※次ページに業種別の天気一覧
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