「俺はもともと仕事一筋。定年退職した後は、妻への罪滅ぼしで、あちこち旅行もした。だが、たくさんあったと思っていた退職金も心細くなってきた。子どもたちはみんな独立した。夫婦だけではこの家は大きすぎる。売却して都心の小さなマンションでも買おうと思って不動産屋に行ったのだが、全然売れないんだよ」
ため息交じりにそう話すのは、神奈川県横須賀市内の戸建て住宅に住む私の知人だ。団塊世代に属し、モーレツサラリーマンで鳴らした人。リタイア生活を楽しんでいるように見えたが、先日久しぶりにお会いしたところ元気がなかった。
彼が住んでいるのは、1980年代に開発されたニュータウン。当時はあこがれの住宅地として人気を博したが、現在は住民の高齢化が著しく、空き家もちらほら目につくようになった。中古住宅にはほとんど買い手がいないという。
首都圏の郊外でも街の孤立化が起きる
埼玉県比企郡鳩山町。東武東上線高坂駅からバスで10分ほどのところに、70〜90年代に分譲された鳩山ニュータウンがある。日本新都市開発(2003年に特別清算)が開発した、埼玉県を代表するニュータウンだ。90年代に売り出された松韻坂地区は1億円を超える分譲価格がついて話題になった。ただし、東京・大手町などの都心に出るには、バスや乗り換えを含め約1時間半かかる。
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