そこは“無縁墓の墓場”だった。熊本県人吉市。ナタで枝や雑草をかき分けながら進むと、多数の無縁墓がそこかしこに現れる。
こけに覆われ土に埋もれ、石に彫られた「信女」という戒名の一部が見えなければ、かつて立派に祭られていた墓とはとても気づかない。
山肌に立てられた墓は、半年程度も経てばまたたく間に雑草にのみ込まれる。30年以上経ち、誰も訪れなくなった墓は竹林に覆い尽くされる。「調査する前は、近隣住民の人々でさえ、ただの竹林だと思っていた」(人吉市環境課の桝田賢氏)。こうした無縁墓の墓場は市内にまだ数カ所ある。
この鳥岡墓地は墳墓総数450のうち414が無縁墓だ。整備されていない道は、雨が降っているわけでもないのにぬかるんでいる。緩やかな坂道の先にあった墓は、周りに雑草が茂り墓石がかろうじて見える程度だ。それでも「これは無縁墓としてカウントしていません」と桝田氏は言う。
無縁墓が市の財政を圧迫する可能性も
人吉市が市内の墓の調査を始めたのは2013年。その前年に墓地経営の許可権限が都道府県から市町村に移管されたことがきっかけだ。市内の墓地の現況を把握しなければ、新しい墓地経営の許可を出すことができない。こうした行政による墓の調査は、人吉市が全国でも初めての試みだった。
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