遠く離れた実家に残された田や山林──。どう相続すればよいか。
「新潟にある実家の森林を相続したが、役所から『木が倒れて道路をふさいでいるので撤去してください』と電話がかかってきた」。東京で会社勤めする50代後半の男性はそうため息をつく。本当に自分の森林の木かどうかを確認するにも時間と交通費がかかる。結局は役所から言われるままに、知り合いに電話して「カネを送るから処分して」と頼むしかなかった。
かつて田んぼや山林は価値ある実家の財産だった。1990年代に日本生命保険の社長を務めた伊藤助成氏は、取材の際、「秋田杉を売って大学の学費にできたおかげで今日の自分がある」と語っていたものだ。
しかし、80年をピークに国産材の価格は輸入材に押されて下落の一途。農家と同様、林家の経営も厳しさを増し、「60代以下で森林経営に興味を持つ人はほとんどいない」と、全国森林組合連合会(全森連)組織部の佐々木太郎部長は危機感を募らせる。
農林水産省の調査では、農家253万戸に対して相続で農地を取得した土地持ち非農家はすでに137万戸に達する(2010年)。また民間の森林所有者は360万人だが、その保有森林面積1343万ヘクタールの約4分の1は、森林が所在する市町村以外に住む不在村者だ(05年、図表2)。
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