日本人はしばしば自国の近現代史を戦前と戦後に分ける。
戦前と戦後とを分ける戦争とは、いうまでもなく大東亜戦争(太平洋戦争)である。それだけ、この戦争が日本人の歴史認識に与えた衝撃は大きい。戦争は敗北に終わっただけでなく、前線の将兵と銃後の国民に悲惨な結果をもたらした。
戦後、日本人は、敵が圧倒的に強大であったことを知り、なぜ勝ち目のない無謀な戦争を挑んだのかを自らに問いかけたが、なぜ負けたのかをあまり問おうとはしなかった。
敵が圧倒的に強大であったからには、負けるのは当然と考えられたからだろう。無謀な戦争に国民を引きずり込んだのは軍人たちだとされ、彼らが率いた日本軍の戦い方はまともな研究の対象とはされなかった。研究の対象として取り上げられることがあるとすれば、大半は軍隊の「悪徳」や愚かさを暴くことが主眼であった。
しかし、悲惨な結果を招いたとはいえ、大東亜戦争が日本人にとって貴重な経験であり、またこの戦争で多くの日本人が軍隊の一員として戦ったのならば、痛ましい経験から正しく学ぶためには、日本軍を、そして日本軍の戦いの実相を、既成のイメージにとらわれずに見つめ直し、客観的に分析すべきではないか。今から30年ほど前、私を含む6人が『失敗の本質─日本軍の組織論的研究』につながる共同研究を始めた動機は、こうした思いであった。
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