安倍晋三内閣の発足以来、政府が企業に賃上げを促す“官製春闘”は2016年で3年目を迎えた。昨年11月、官民対話の場で安倍首相は経済団体のトップらに向けて「経済の好循環ができるかどうかは設備投資と賃上げにかかっている」と述べたうえで、「しっかりと(賃上げを)実行していただくように期待している」と強調した。
だが過去の2回とは異なり、賃上げへの意欲は労使ともに弱まっている。経団連は賃上げについて、収益が拡大した企業で「15年を上回る年収ベースの賃金引き上げ」と述べるにとどまり、ベースアップ(ベア)には慎重な姿勢を示している。一方の連合はベアに関する要求として、15年春闘で「2%以上」としていたが、今回は「2%程度」へトーンダウンした。
賃上げに消極的な姿勢が広がった背景に、外部環境の悪化があることは想像に難くない。昨夏からの資源安や中国をはじめとする新興国の景気減速は、世界経済の先行きを不透明にしている。そこへ今年に入り世界的な株安が重なり、賃上げムードに冷や水を浴びせた格好となった。暗雲が垂れ込める中、16年春闘の賃上げ率は昨年を下回る可能性が高まっている。
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