メディアとしての信頼性確保が重要--エマニュエル・オーグ 仏AFP通信社社長
世界規模の経済危機の余波で、メディアを取り巻く経営環境が厳しさを増している。世界3大通信社の1つ、仏AFP通信社のエマニュエル・オーグ社長に今後の戦略などを聞いた。
--フランスでは日本よりも中国のニュースへの関心が高まっていると聞きます。
AFP通信は世界中でビジネスを展開しています。日本の情報をフランスだけ、あるいはフランスの情報を日本だけに配信しているわけではありません。われわれを必要としてくれる顧客は、フランス国内よりもむしろ国外のほうが多い。世界のさまざまな国の情報をカバーし、それを世界中に発信するのが役割。特定の国のニュースだけを重点的にカバーするというスタンスは採っていません。
日本では時事通信社と提携しています。時事にはフランスの情報だけでなく、世界の情報を提供しています。アジアでも情報を収集し、アジアでも配信している。これがわれわれの独自性でもあります。
--これまでに多くの海外メディアが東京の支局などを閉鎖しました。
AFPに関しては、その心配はありません。東京は戦略的な拠点でもあります。推し進めているのは縮小ではなく、グローバルに拡大するという方策です。
世界では現在、7つの言語でニュースを配信しており、今後はアラビア語のニュースを強化しようとしています。地域的には、歴史的経緯もあってこれまで大きなプレゼンスを保ってきたアフリカでの展開を一段と拡充する考えです。ブラジルとインドも戦略上、非常に重要です。アジアにはすでに十分根を下ろしていると思いますが、さらなる強化が必要でしょう。
情報発信の面ではニュースのクオリティを維持することが大事です。そこにはもちろん、写真も含まれています。通信社にとって写真は大きな武器だからです。同時に、動画配信も強化したい。現在、世界で1日当たり約50本の動画を配信していますが、向こう2年で3倍の150本まで増やすことを目標にしています。