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MERS拡大は防げるのか 韓国では封じ込めに失敗

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中東を旅行した国民から感染が拡大した韓国。国民、政府ともに、感染症への危機意識と対策が甘かった(AFP=時事)

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隣国・韓国でにわかに拡大した中東呼吸器症候群(MERS)。6月30日現在、確定感染者数が182人、うち死亡者が33人に達している。発生源とされるサウジアラビアに次ぐ感染者数の多さには、韓国政府や病院側の態勢の不備が原因と指摘されている。現在は小康状態に入っているようだが、今後も感染者が出ない可能性はない。

日本でまだ感染者の報告がないMERSとはどういうものか。発熱やせき、息切れなどが主な症状で、下痢などの消化器での症状を伴う場合もある(図表1)。特に、感染者が高齢である場合、また糖尿病や慢性的な肺疾患などを持つ感染者は、重症化する傾向がこれまで指摘されている。

[図表1]
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現時点では感染者の6割超が男性で、50歳前後の発症が多いことも特徴の一つだ。死亡例で見ても、50歳未満の死者はたった1人(致死率1.5%)で、50歳以上の致死率は23.4%に達している。

2012年9月に英国のロンドンで初めて確認され、特にサウジアラビアやイラン、オマーンなど中東地域での感染者数が多い。13年春ごろからじわじわと増え始め、14年4~5月には同地域で350人超の感染者が発生したことがある。15年は韓国での流行で、中東以外の感染者数が中東での感染者数を超えている。

ワクチンや治療法はなし

MERSには現状、対処できるワクチンやこれといった治療法はない。感染経路として、中東に多いヒトコブラクダがMERSウイルスの感染源動物の一つではないか、とされている。日本にいるヒトコブラクダには、MERSウイルスがいるとの報告はなされていない。

また、韓国での発症例を見るとわかるが、感染者から医療従事者、医療機関にいる別の患者やその家族への感染が非常に多い。すなわち、濃厚接触者間の感染がほとんどと言え、空気感染や飛沫感染で不特定多数に広がるケースは少ないと考えられている。

世界保健機関(WHO)が6月17日に、韓国で感染が拡大した理由を発表している。この中では、医療従事者や一般国民の危機意識の欠如のほか、病院での不適正な感染防御・制御対策が取り上げられている。さらに、混み合った救急室や病院でのMERS感染者との濃厚・長時間接触と、複数の病院で医療を受ける「ドクターショッピング」の慣習、感染者の家族や見舞客が長時間病室にとどまることなども、要因として指摘されている。

また、「スーパースプレッダー」と呼ばれる特定の人からの感染が多く、かつ特定病院での感染拡大が多いのも韓国での特徴だ。これは、感染者との濃厚な接触を避ければ、拡大はある程度防げることを示唆している。

年間500万人ほどが行き来する日韓関係を考えると、韓国の状況は対岸の火事ではない。感染症には一定の潜伏期間もあり、「検疫態勢が整っていても、検疫時点で症状が顕在化していなければスルーしてしまうこともあり、どうしても限界はある」(感染症などリスク対策に詳しい、三菱総合研究所社会・安全政策研究本部の平川幸子主任研究員)。

WHOは今回の韓国での感染拡大を「目覚まし時計のような警鐘」と表現しているが、これを機に国内での発生を想定し、万全の対策を行うべきなのは間違いない。

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