絶対的存在だった国税局査察部。だが今、その根幹が揺らぎ始めている。
「国税局査察部です。××税法違反の疑いで強制調査します」。脱税容疑者の元に突然やってきて、裁判所の捜索・差押令状を突き付け、問答無用で脱税の動かぬ証拠を捜索する国税局査察部、通称「マルサ」。1948年の発足以来、歴史に残る数々の巨額脱税事件を掘り起こし、世論の喝采を浴びてきた。その実態は故伊丹十三監督の映画『マルサの女』(87年)で克明に描かれ、国民に「税務調査はすべてマルサの仕事」と勘違いされるほど有名な存在になった。
東京、大阪など全国11カ所にある国税局と沖縄国税事務所に配属されている査察官は合計約1300人。約5万5000人の国税職員全体のわずか2.3%にすぎない。その約4割に当たる約530人が、東京国税局に配属されている。
強制調査(査察)の対象になるのは意図的に仮装・隠蔽が行われた悪質な所得隠しで、その金額が3年間で1億円を超える事案。内偵調査を担当する情報部門(通称「ナサケ」)の査察官は、納税申告書のチェックや関係先からのタレ込み情報などで脱税の端緒をつかむと、地道な内偵調査で脱税の手口や、不正に蓄財された資産=「たまり」を洗い出す。メガバンクの調査センターでは、すでに解決済みの脱税事件の関連調査を装いながら内偵中の関係者の口座を調べる、「横目調査」という手法を使うこともある。
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