今秋で開業50周年を迎える東海道新幹線の実現は、わが国の経済成長と都市化を促進した。それだけでなく、先進国の鉄道再生や高速化を先導した点でも誇りうるインフラだ。日本の鉄道関係者の信念は、「鉄道は経験工学」という一語に集約されている。
ところが、車輪もレールも架線もない、まったく異質の鉄道=リニアが日本で造られようとしている。政府も事業者も情報開示に消極的で、多くの国民は知識も関心も低い。着工の可能性が高まってきた、リニア計画の実現と成功の可能性について、筆者の見解を述べたい。
結論を要約すると以下のとおりだ。
現在のリニア計画を着工すれば、建設過程でそうとう難航するだろうが、それでも物理的な完成は可能かもしれない。しかし、開業後の事業採算は極めて困難で、運営上のリスクも高く、投資回収も不可能である──。こうした厳しい見方にならざるをえない。
何より計画目的に妥当性が欠けている。巨大インフラ・プロジェクトを成功させる基本的条件は、妥当な目的と適正な実現手段である。鉄道のような公共性の高いプロジェクトは、多くの国民に納得され、合意を得られるものでなければ、必ず失敗する。また目的が妥当でも、進め方や実現手段が適切でないかぎり、失敗に終わる。その具体例は、超音速旅客機「コンコルド」だ。
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