【産業天気図・放送・広告】テレビのタイム広告は依然低調、放送・広告とも当面は「曇り」で停滞
10年10月~11年3月 | 11年4月~9月 |
放送・広告業界は2010年10月から1年通じて、「曇り」の鈍い景況感が続きそうだ。足元の広告出稿はテレビスポットを中心に回復傾向にあるが、景気見通しは依然として不透明がぬぐえていない。
マス広告4媒体のうち、広告規模が大きいテレビは持ち直している。中でも番組間に流すスポット広告が好調だ。10年度前半の東京地区のスポット出稿額の平均は8.1%増。だが、番組スポンサー広告であるタイム広告は前年割れが依然続いており、スポットとタイムを合計した放送収入全体でみると軟調とみるべきだろう。タイム広告はいわゆる番組提供スポンサーとしての広告で、広告主の企業側にとって固定費となるために敬遠されがち。状況としては一段と短期的なスポットに広告に流れやすくなっており、本格的なテレビ広告回復にはまだ遠く及びそうにない。
その中で、放送業界では二極化が進んでいる。在京民放キー局のうち、視聴率4位で低迷中のTBSホールディングスは、柱のテレビ事業は赤字が続く。「赤坂サカス」の不動産事業の下支えに頼っている状況だ。
一方、視聴率首位のフジ・メディア・ホールディングスは業績好調。ドラマやバラエティなど購買力の高い10代~20代の視聴者が多く広告単価が高いほか、今11年3月期はテレビから派生した映画事業も絶好調。「踊る大捜査線」「海猿」「SP」など邦画実写映画で興行収入上位を独占した。視聴率2位の日本テレビ放送網も含め、上位会社はトップラインを確保したうえで、番組制作費の削減を進めるなど筋肉質になってきている。
広告業界もテレビと構図は似ている。首位・電通は柱のマス広告で圧倒的に強く、テレビスポットを中心にがっちりと脇を固めており、今11年3月期は増収増益を確保する見通し。一方、2位・博報堂DYホールディングスはテレビスポットがようやく底を打った程度で、内製化率向上など経費削減でやっと利益を出している。電通とは回復の差が歴然だ。
さらにアサツー ディ・ケイは一段と厳しい。今10年12月期は営業赤字の見通しで、100人規模の早期退職を今秋実施したばかり。大きくスリム化することで来期の黒字浮上に向けて必死だ。
11年4月以降の半年も、テレビ・広告業界のトレンドは大きく変わらないとみられる。テレビのタイム広告がようやく底打ちしても、今期回復の大きいテレビスポットは伸び率が鈍化するのは否めない。円高や欧米のデフレ懸念などもあり、企業の景況感は依然不透明だ。テレビ広告にプラスとなるような大規模イベントも少なく、エコ関連支援なども剥落することで、広告出稿が鈍ることも予想される。
(冨岡 耕=東洋経済オンライン)
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