工場排水をカネに換える、味の素のしたたかな戦略

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小


 味の素が環境リスク対策として取り組んでいるのが、排水技術の高度化とビジネス化だ。

排水に関する自主基準を設定し、10年度までに排水量20%削減、海洋投棄ゼロとした。排水の汚染度を表す窒素、BOD(生物化学的酸素要求量)の値はそれぞれ5ppm、10ppm以下に設定。東南アジアのいちばん厳しい国の基準よりさらに厳格にした。実現に向けて、歩留まり改善につながるアミノ酸の抽出精度を高める研究に加え、排水処理法の転換を決断した。

従来は、食品工場や下水処理などで一般的な活性汚泥法を採用していた。窒素などを微生物の力で分解する方法で、窒素含有量は減らせるが特定の種類しか減少させることができない。

このため導入したのが、生物的硝化脱窒(BDN)法だ。これは全種類の窒素の分解が可能。さらに水中の窒素をガス化して空気中に放出できるため、排水中の窒素量を5~6分の1に削減できる。ただ、処理方法の転換には大規模工場だと約30億円もかかり多額の費用が必要だ。水処理法への投資は製品の質に直結するわけではないが、「排水の量と質の見直しは歩留まり改善にも直結する。利益と相反するものではない」(永井常務)と踏み切った。

すでに、09年度までに40事業所中18事業所で目標値を達成。製品1トン生産当たりの排水量は03年度から半減した。途上国の水処理に詳しい和田洋六・日本ワコン監査役は「東南アジアなど途上国では厳しい基準は形骸化しており、違反しても少額の罰金で済む場合がほとんど。その中であえて厳格な基準を設け、対策を進めるのは異例」と評価する。


関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事