ヤマハの「3輪バイク」は何がすごいのか 徹底試乗でわかった驚きの性能

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安定感抜群の「トリシティ」だが、自立させるにはサイドスタンド、もしくはセンタースタンドを立てる必要がある。つまり走行状態では自立しないのだ。とはいえ、前述したように走った状態であれば、3輪でがっちりと路面をつかむため安心感は2輪スクーターの比ではない。

こうしたどっしりとした走行性能は「トリシティ」の魅力のひとつ。前2輪であることを意識するのは、時速10キロメートル以下の微速域のみで、そこから上の領域では一気に安定感が増す。大げさな表現ではなく、時速60キロメートルで走行している際の安定感は掛け値なしで250ccクラスのビッグスクーター並み。それでいて、車両重量は40キログラム近くそれらよりも軽いため乗り味は非常に軽快だ。

実燃費はカタログ値を超えた!

さらなる驚きは燃費数値で、今回、筆者は180キロメートルほど試乗したが、平均燃費は1リットル当たり47.9キロメートルkm(計測は満タン法)とWMTCモードにおけるカタログ燃費値(同38.8キロメートル/クラス1/1人乗り)以上を記録した。

ハンドリングも実に軽快。コーナーでは、その複雑な機構をもった前輪が動いているとは思えないほどに、何も意識することなく軽やかに車体をリーンさせることができる。一部、タイトなコーナーや、すり抜け時の切り返しで前輪が突っ張り気味になることがあるが、それさえ意識すれば2輪スクーターと同等のバンク角があるため、本格的なスポーツ走行も難なくこなす。

ブレーキ性能は非常に強力だ。二つの前輪にはそれぞれ油圧式のシングルディスクブレーキが装着されているためブレーキレバーの握り込みに応じてしっかりとした制動力を示してくれる。また、「トリシティ」には前後連動ブレーキシステムである「ユニファイドブレーキ」が採用されているので、通常の2輪スクーターであれば後輪にのみブレーキが掛かる左レバーを握るだけで、同時に前輪にも適度な制動力を生み出せる。とはいえ、左ブレーキはあくまでも後輪が主体であるため、通常の制動時は前輪用の右レバーと左レバーの同時操作が必要だ。

前述した欧州メーカーの3輪スクーターには、高速自動車国道への乗り入れができる125cc以上のエンジンを搭載したモデルもあるが車両価格は100万円近い。その点、「トリシティ」は33万円(税抜き)と原付2種クラスの枠内だ。車両重量と安定性の相関も良いことから、女性ライダーやリターンライダーにもオススメしたい。

西村 直人 交通コメンテーター

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にしむら なおと / Naoto Nishimura

1972年1月東京都生まれ。WRカーやF1、さらには2輪界のF1と言われるMotoGPマシンでのサーキット走行をこなしつつ、4&2輪の草レースにも精力的に参戦中。また、大型トラックやバス、トレーラーの公道試乗も積極的に行うほか、ハイブリッド路線バスやハイブリッド電車など、物流や環境に関する取材を多数担当。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)理事。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。(財)全日本交通安全協会 東京二輪車安全運転推進委員会 指導員。(協)日本イラストレーション協会(JILLA)監事。★Facebook「交通コメンテーター西村直人の日々

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