がん患者1700人治療医師がYouTubeで語る真実 「標準治療」にまつわる誤解はなぜ多いのか

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ちなみに、標準治療には抗がん剤治療も含まれるが、抗がん剤というと「ゲーゲー吐く、きつい治療」と思っていないだろうか。押川さんは「それは昔の話」と一蹴する。

「実は、がんの薬物治療の進化は免疫チェックポイント治療薬や分子標的薬のような治療薬の進歩もありますが、それより大きいのは副作用を抑える薬が発展したことでしょう。脱毛などはまだ防げませんが、吐き気止めも今では予防的に使えるものが4種類あり、さらに3種類以上の吐き気止めが自分で加減していけるものになっています。おかげで、昔から使われている抗がん剤でも昔みたいに苦しい目に遭うことはなくなりました。実際、がん患者さんの副作用でキツいと考えているのは、吐き気などよりもメンタル面です」(押川さん)

副作用対策はがん治療を継続するためにも欠かせない。その対策法が日々進化していることは、がん患者にとっては希望にもつながるのではないだろうか。

医師とのコミュニケーションが最大の課題

ところで、標準治療にしろ、抗がん剤の副作用対策にしろ、自分にとってベストながん治療を受けるために必要なのは、医師と良好なコミュニケーションをとることだ。実はここが今、日本のがん治療における最大の問題点だと、押川さんは考えている。

「医師は1日に何十人もの患者さんを外来で診ています。診察室に入ってきた患者さんの顔を見て、電子カルテを見れば、どんな患者さんだったか思い出しますが、1人ひとりのことを詳細に覚えているわけではありません。また、副作用などは血液検査や診察でわかるものもありますが、多くはご自身しかわからない自覚症状です。“医師にお任せ”ではなく、しっかり状態を訴えなければ、必要以上に強い治療をしてしまったり、副作用対策が遅れて治療の継続が困難になったりすることもあります」(押川さん)

医師とのコミュニケーションはビジネスでたとえれば、「クライアントにプレゼンするイメージに近い」という。手短に、相手にわかりやすく自分の現状を説明し、理解してもらう。あくまでも治療の主役は自分で、医師は二人三脚で走るパートナーという考え方が重要だ。

「医師はがんの専門知識はありますが、自分の体や心の状態を一番知っているのは自分です。今はがんになっても6割の人が治ります。がん治療に人生のすべてをかけるのではなく、生活、仕事、家庭、がん治療どれも大事にしながら、両立させる。そのためには医師を上手に“活用”することが大事なのです」(押川さん)

『がん防災チャンネル』では、適切ながん治療の情報を伝えているだけではない。押川さんが日々がん情報を発信する最大の目的は、患者に希望を持ってもらうこと。そして、がん患者は決して「かわいそうな存在」ではないと、自覚してもらうことだ。

そのためにも、がんにかかる前からがんという病気、そして治療について正しい情報を得てほしい。「備えあれば憂いなし」という言葉は、がんにも当てはまるのだ。

(構成:ライター安里和哲)

※Differences in the Quality of Information on the Internet about Lung Cancer between the United States and Japan
https://www.jto.org/article/S1556-0864(15)32421-7/fulltext
山内 リカ 東洋経済オンライン 編集者
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