ウクライナ危機、中国台頭でもドル優位揺るがず ドルに代わる代替資産を見つけるのは至難の業

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ドルの優位性を奪うと言うのは簡単だ。だが、その実現は困難を極める。それが投資家の結論だ。

ロシアが保有するドル資産を米国が凍結したことをきっかけに、外貨準備へのアクセスが確実に守られるのか各国の中央銀行は再検討を迫られた。中国などがドル建て金融システムから脱却し、代替手段を模索する取り組みを強化するとの観測も広がった。

ゴールドマン・サックス・グループやクレディ・スイス・グループはドルの優位性が脅かされる可能性をこれまでに指摘しているが、有効な代替資産を見つけるのは至難の業だとブランディワイン・グローバル・インベストメント・マネジメントやJPモルガン・アセット・マネジメントなどのファンドはみている。

米経済の規模や強さは並ぶものがなく、米国債はなお最も安全な資金保存手段の一つだ。ドルは引き続き安全資産への逃避を求める資金の流入が際立っている。

世界の外貨準備にドルが占める比率出所:ブルームバーグ、IMF

ドルに代わる他の通貨の選択肢は現時点で全く存在しないと、モビアス・キャピタル・パートナーズ創業者のベテラン投資家、マーク・モビアス氏は指摘。「ドルは依然強く、緊張激化が続けば、一段と強くなるだろう」と述べた。

1日当たり6兆6000億ドル(約786兆円)が取引される外国為替市場全体の売買の90%近くがなおドル絡みの取引であることを、国際決済銀行(BIS)のデータは示している。

さらに国際通貨基金(IMF)のデータによれば、ドル保有を着実に減らす取り組みにもかかわらず、ドルは中銀外貨準備の約60%を占める。ドルに次ぐユーロは約20%にとどまっている。

JPモルガン・アセット・マネジメントのストラテジスト、ケリー・クレイグ氏(メルボルン在勤)は、「円やユーロ、オーストラリア・ドルを購入して分散を図ることは可能だが、これらが準備資産として本当にドルの代わりになれるとは思わない」と述べ、「米国はなお世界経済の舞台で支配的な地位にある」と続けた。

原題:

Usurping Dollar’s Dominance an Impossible Task, Fund Giants Say(抜粋)

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著者:Ruth Carson、Libby Cherry、Tania Chen

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