新幹線脱線対策、JR東日本と東海の決定的な違い 「逸脱防止」か脱線自体を防ぐか、どちらを重視?
一方、JR東海は東海道新幹線の脱線そのものを防ぐ対策を進めている。
将来予想される東海地震の際に強く長い地震動が想定される地区や脱線した場合の被害が大きい箇所を対象に「脱線防止ガード」をレールの内側に平行して設置する工事を2009年から開始した。また、全車両に「逸脱防止ストッパ」を設置済みで、万一脱線した場合にも車両が線路から大きく逸脱することを極力防止する。JR東日本同様、土木構造物への対策も進めている。
脱線防止ガードは2020年度末時点で約667kmの設置が完了。東海道新幹線の東京―新大阪間は上下線と回送線なども合わせて1072kmあるので全体の約6割で対策を施したことになる。2020年度からは残りの部分の工事にも着手し、全線に対策を施す計画だ。2028年頃の完了を目途としている。
コロナ禍で減収の中「対策」どうするか
新幹線車両に逸脱防止ストッパを設置していることからわかるように、JR東海も脱線防止ガードがあれば脱線を100%防ぐことができると考えているわけではない。
それでも、JR東日本が逸脱防止としているのに対して、JR東海が脱線そのものを防止する方針を取っているのはなぜか。同社は、「脱線した車両の復旧に相当程度の日数を要し、運転再開までに時間を要することは過去の地震においても確認されている」と話す。
復旧に時間がかかるという部分がポイントだ。東京―名古屋―大阪という経済の大動脈を結ぶ東海道新幹線は運行本数が東北新幹線とは比較にならないほど多い。長期間の運休は日本経済にも影響を及ぼしかねない。それだけに復旧に時間がかかる脱線は極力防ぎたいということだろう。
全線に対策を施す費用の総額はおよそ2100億円と見込まれている。これだけの巨額の費用をかけても施すべき対策だとJR東海は考えている。
もちろん、東北新幹線が現状の対策で十分ということはない。北海道新幹線は2030年度の札幌延伸に向けて工事が着々と進んでいる。開業すれば関東・東北と札幌を結ぶ旅客移動の一定割合を新幹線が担うことになる。東北新幹線の役割が今まで以上に高まれば、脱線による長期の運休を許容できないという声が上がるかもしれない。
JR各社は自然災害対策や環境対策、老朽化した設備の置き換えなどに多額の資金を投じている。そこへ地震対策があらためてクローズアップされる形となった。コロナ禍で旅客収入が激減する中でどの分野に資金を振り向けるか。知恵を絞る必要に迫られている。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら