新幹線脱線対策、JR東日本と東海の決定的な違い 「逸脱防止」か脱線自体を防ぐか、どちらを重視?

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過去の大地震による新幹線の脱線例を見ると、2011年3月の東日本大震災では東北新幹線で試験走行中だった10両編成のE2系が仙台駅構内に進入中、地震の強い揺れによって4両目の台車2軸が脱線した。地震発生時、同新幹線ではほかに宇都宮―盛岡間の上下線で16列車が運行しており、このうち10列車が駅間を走行していたが、いずれも非常ブレーキが作動して減速し、脱線せずに停車している。

2016年4月の熊本地震では、熊本駅から車両基地に向かっていた九州新幹線の回送列車800系6両編成が脱線した。強い揺れを感じた運転士はすぐに非常ブレーキ操作を行ったが、6両すべてが脱線した。6両編成なので車軸は24本あるが、うち22本が脱線していた。

2004年の新潟県中越地震で脱線した上越新幹線「とき325号」(写真:masa9/PIXTA)

乗客を乗せて運転していた新幹線の脱線事例は、2004年10月の新潟県中越地震にさかのぼる。東京発新潟行き「とき325号」。200系10両編成で、5〜6両目を除く8両が地震による揺れの影響で脱線した。乗客151人、乗務員3人のいずれにも死傷者はいなかった。脱線後も車輪と台車部品の間でレールを挟み込んだ状態でレールに沿って走行したため、線路から外れて転覆したり、大きく逸脱して外壁に衝突したりする事態が避けられたためだ。

ただ、10両目は車体が右へ約30度傾いて右側面が上り線の軌道に接していたため、もし対向列車がいれば衝突するおそれもあった。

脱線しても「逸脱」防ぐ仕組みを整備

この教訓を踏まえ、JR東日本は脱線対策に本格的に着手した。「脱線そのものを防ぐことはかなり難しい」(市川東太郎副社長)という観点から、もし脱線しても車両をレールから大きく逸脱させないように、すべての車両の「逸脱防止ガイド」を設置した。地震発生時にもし脱線したとしても、台車軸箱下部に取り付けられたL字型のガイドがレールにひっかかることで、車輪が線路から大きく逸脱することを防ぐ仕組みだ。

新幹線E5系の台車のアップ。写真中央の軸箱から下に出っ張った部分が「逸脱防止ガイド」だ(写真:今井康一)

さらに線路側にもレールの大きな横移動や転倒を防ぐ「レール転倒防止装置」の整備を進めている。同時に高架橋柱や橋脚の耐震補強対策も進行中だ。

今回の脱線事故の原因や影響については調査結果を待つ必要があるが、大きな揺れによって17両中16両が脱線したにもかかわらず、大惨事にならずに済んだのは逸脱防止対策が功を奏したものと考えられそうだ。

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