会社の部品にならない「新種の老人」という生き方 スープストック創業者が思い描く理想の今後

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──“新種”の中身は各自が好きに決めてください、と。

例えばとおい山株式会社は、通常の会社では拾えない、突っ込んでいきにくい活動の受け皿になっていくと思う。具体的じゃないけど、1つはアート活動になるでしょうね。

2018年に始めたアートと個人の関係をより自由なものにする「ザ・チェーンミュージアム」の仕事とか、福山のデニムメーカーのコンサルとか、話が来ている美大教員とか、どちらかといえば個人的な仕事を色分けして。そこに何が入ってくるか、先が楽しみです。

最初からこうと決めずに、やってるうちに自分らしさみたいな、10年後には「あ、『とおい山』らしいね」と言われるような、何か顔立ちが生まれていればいい。とおい山という社名自体、遠くの山がゾウに見えたりクジラに見えたりする少年の妄想から取った。それってまさに、北軽井沢の別荘で山眺めてお茶飲んでるときの俺じゃん、みたいな(笑)。

「やりたいからやるんだよっ!」でいい

──遠山流の老後指南、ではない。

そうそう。格好よく言えば、私はこうチャレンジします、って一見本ですかね。アートと一緒、100人全員に共感してほしいのではなく、「あ、何か面白いかも」って思う人がいたらそれで楽しく話せるし、そんな気づきが広がっていけばいいなと思います。

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27年前、最初に個展を開いたとき、「絵の個展やって何かいいことあるの?」って聞かれて、合理的な説明なんてできなかった。一介のサラリーマンであり、子どもは2歳になったばかりで、誰に頼まれたわけでもなく、四面楚歌だったわけ。「アーティストになりたいの?」「いや、そういうわけでも」「じゃあ何なの?」「いやあ……」。やりたいからやるとしか言いようがなかった。

でも今、それがかえってよかったんだなと思ってる。合理的に説明できていたら、経験者とか偉い人に合理的な説明で打ち返されて、チーンで終わっていたかもしれない。単に「やりたいからやるんだよっ!」だったから突破できたし、それが今につながっているかなと思います。

中村 陽子 東洋経済 記者

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なかむら ようこ / Yoko Nakamura

『週刊東洋経済』編集部記者

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