大雨被害の上高地線、注目高まる「新車」と「復旧」 2021年夏に橋梁が被災、6月の全線再開目指す

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「雨は普通よりちょっと強いかなというくらいでしたが、とにかく水がすごかったですね。普通は大雨でも半日程度で引いていたんですが……」。隠居部長は被災当時、8月14日の様子を振り返る。

被災したのは、松本駅から1kmに満たない地点にある「田川橋梁」。長さはわずか39mで、電車2両がちょうど収まる程度だ。建設は開業時の1920年だが、「戦後に国道と立体交差する際にかさ上げしており、橋桁はこの時に架け替えている」(隠居部長)。2基ある橋脚も「古いものを芯にして外側に新たに巻いた形になっている」といい、100年前そのままの姿ではないという。

田川橋梁は、もう1つの鉄橋である奈良井川橋梁とともに2005~2006年に健全度調査を実施。その結果を踏まえ、2012~2013年に河床の低下を防ぐための工事などを実施していた。

「通常と違う揺れ」で運休、その後…

8月14日は、雨自体はさほど強くなかったため電車は朝から通常通り運転していた。だが、田川の水かさは通常と違った。「普段はちょろちょろの川なのに、最終的には橋桁の真下まで迫るくらいに増水していた」。そして警戒しながら運行を続けていた午後4時半過ぎ、田川橋梁を通過した上り電車の運転士から「通常と違う揺れ」を感じたとの報告が入った。

警戒していた担当者らが急行して確認すると、橋にわずかな歪みが生じていた。「これは水が引くまでは対応が難しい」。同日中の運休を決めたが、川の水はまったく引かなかった。「田川は雨が降るとバッと水が出るがすぐに引くので、水が引いたら調べて対応しようと考えていた。でもこの時はどんどん水かさが増していった」と隠居部長はいう。

夜通し警戒を続けたが、ついに翌15日の朝6時ごろには橋脚のうち1基が傾き、線路は大きく歪んでしまった。橋桁は約40cm下がった状態だったという。

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