イオンの新3カ年計画で復活する「拡大志向のDNA」

拡大
縮小

増額後の通期の会社予想は、営業収益は5兆0600億円超(前期比0.1%超増)、営業利益1500億~1600億円(同15.2~22.9%増益)となっている(イオンは幅を持たせた業績予想を開示している)。

国内GMS見切り海外へ

GMSの採算改善にある程度メドが立ったとはいえ、人口が減少する日本国内で小売りマーケットが大きく成長する期待はしづらい。そこで新しい中計では、引き続き設備投資はキャッシュフローの範囲内、かつ投資先は国内向けを減らし海外向けを増やす。より詳細に見ると、国内は小型店舗や既存店のリニューアル投資の資金は減らさず、その他の投資(主にITと大型新店)を半減させるのだ。

半減と言っても、すでにGMSは2005年2月期の265店をピークに漸減しており(10年2月期末248店)、うなぎのぼりに大型新店を殖やした往時のイオンの面影はない。そこからさらに半減させ、かつ「IT投資は減らさない」と言明しており、今後のGMS出店は首都圏を中心に「年4~5店」(千葉清一CFO)に抑える。事実上、“国内GMS出店の終焉”を印象づけた形だ。

ただし、かつてのイオンのDNAである「拡大志向」に終止符を打ったわけではない。中国、ASEANを中心に、海外での出店を加速していく。新中計での投資額も現中計(3年間で約770億円)から3倍近く(同2000億円強)に増やす。中長期的には、持ち株会社の傘下に日本・中国・ASEANの3地域本社がぶら下がる形態へ移行する計画だ。中国・ASEANでの小売りの現地化、ウォルマートなどグローバル小売りとの競争など、課題は枚挙にいとまがないが、成熟する日本国内で消耗戦を続けても、「グローバル10など夢のまた夢」と、割り切ったのだろう。

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