北朝鮮のケータイ基本料金はタダ同然? 国民の10人に1人が持つケータイは安かった

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最近、北朝鮮を訪問した複数の在日コリアンに聞いて見ると、「確かに2台以上持つ人は珍しくない。だが、基本料金がタダ同然かどうかはわからない。以前、加入時に5000ウォン程度を支払う形で通話料の前払いをし、その後外貨で一定の金額を支払うと聞いたことがある」と言う。

また、北朝鮮事情に詳しい韓国・国民大学の鄭昌鉉(チョンチャンヒョン)教授は、「その程度の基本料金で使われていると聞いている」と指摘する。北朝鮮国民が携帯電話加入時には端末代金として200~300ドルを支払い、うち7割が北朝鮮逓信省の利益取り分となる、と説明する。

高麗リンクによる移動通信事業は2008年から始まった。当時、基本料金を策定する際に、北朝鮮は1ドル100ウォンを基準にして策定したようだ。その後、デノミ実施による混乱で為替レートが乱高下し、その後、現在の水準で安定しているが、それが携帯電話料金に反映されていない状況のようだ。

高麗リンクの出資者であるオラスコム社は当初、「タダ同然の基本料金には不満を持っていた」(前出の鄭教授)。最近では加入者数が足踏み状態になっているが、2008年の事業開始から急速に240万台まで普及したことで、その不満を隠していたようだ。

政権幹部に便宜を図るための低料金?

RFAは、携帯電話はもともと、中央・地方の(朝鮮労働)党幹部や政府機関の責任者、治安・警察機関の国家安全保衛部や保安部の要人に対し「業務用」として携帯電話を無料で配布したことを指摘、「仕事上の便宜を図るためにはタダ同然の基本料金でも仕方がない」といった分析をしている。

携帯事業では相当な収益が上がっており、かつて、「すでに2億ドル以上の収入を得ている」という報道もあった。オラスコム社にとっては、当然その配当があるはずだが、「北朝鮮からの本国エジプトへの送金がなされないまま」とオラスコム社が発表したことがある。10月にも同社の社長が訪朝したが、この問題は解決されなかったようだ。

平壌市民なら誰もが持っていると言える携帯電話。最近は国産とされるスマートフォンなども普及しているほどだ。だが、その事業性については北朝鮮らしい「社会主義」的な要素がつきまとうようだ。

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『金正恩の「決断」を読み解く』(彩流社)、『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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