スバル「レガシィ」、あえて大きめで勝負 旗艦モデルの6代目はゆとりを持って走る

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一方、大型化でレガシィ離れが進んだ国内には、同じ6月に新型スポーツワゴン「レヴォーグ」を投入。5代目レガシィよりもホイールベースなどを短くし、取り回しをしやすくした。今回のレガシィ全面改良をもって、ツーリングワゴンは廃止された。その後をレヴォーグが受け継ぐ。時代の流れを象徴する動きといえるだろう。

今や米国のための車と言っても過言ではないレガシィだが、それでも国内に投入する意味とは何なのか。吉永社長は「“スバルといえばレガシィ”というように、フラッグシップモデルとして期待してもらっている日本のお客さんも多い。現在世界で受け入れられているわれわれの車は日本市場で鍛えられた。もっと車を磨き上げるために、国内にはきちんとしたものをどうしても出し続けたい」と強調する。

 レガシィのB4とアウトバックを合わせた月間販売目標は1200台。先代の発売当初は両モデルで月1500台を目標としていたことを考えれば、富士重として慎重に見ていることがわかる。「世界で生き残るために米国向けに大型化した。確かに日本では“ちょっと大きいよ”と思うお客さんもいる」と、吉永社長も大型化したレガシィからの顧客離れを認める。

ただ、「そういう人たちのために日本にジャストサイズのレヴォーグを造った。ショールームで、レガシィのB4とアウトバック、レヴォーグが並んでいる様子を見てもらえれば、われわれの狙いがわかってもらえるはず」(吉永社長)。実際、レヴォーグは足元で月間5000~7000台と、当初の目標を上回るペースで推移しており、顧客の嗜好がはっきりと表れている。

競合はベンツCクラスなどドイツ車

国内仕様のレガシィの新型アウトバックとB4には、最近のスバル車に多い直噴ターボではなく、自然吸気のエンジンのみが採用された。その理由として「アクセルを踏み込んだ瞬間から、滑らかに加速していく感覚を重視した」と語るのは、開発責任者を務めた内田雅之・上級プロジェクトゼネラルマネージャー。直噴ターボエンジンを積み、俊敏な走りを売りとするレヴォーグや8月に発売したスポーツセダン「WRX S4」は、比較的若年層向け。一方、今回のアウトバックやB4は「どちらかというと年配の方がゆとりをもって走れる車」(内田氏)だという。

セダンのB4でいえば、競合となるのがトヨタ自動車の「カムリ」や日産自動車の「アルティマ」(海外専用)、ホンダの「アコード」。だが、内田氏が開発過程で意識したのは、アウディ「A4」やメルセデス・ベンツ「Cクラス」といった、ドイツの高級車だという。比較的サイズの大きいセダンは、中高年を中心にドイツ勢に支持が集まる。デザインや走りの質で高級路線を目指すことによって、米国での拡販を狙いつつ、日本でも特定の顧客層に訴求したい考えだ。

 レガシィの変遷を見れば、時代の移り変わりと、富士重の企業としての戦略の変化がつぶさに分かる。日本での存在感をかつてのように保つことは難しいが、スバルという自動車ブランドにとって欠かせないものであることに変わりはない。

(撮影:今井康一)

中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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