コンビニ弁当で密かに「チルド化」が進む納得理由 丼ものや麺類中心から技術改良で種類が拡大中
あまたのメリットがあるにもかかわらず、2021年までチルド弁当の大半は丼ものか麺類に限られていた。ご飯ものの中心が丼ものだったのには理由がある。チルド化した際の弱点を克服しやすかったからだ。
「冷蔵はご飯がつねに老化していく状態。レンジにかけた際にどうしても米粒が割れてしまう」(笠石部長)。そこで具材とご飯を上下に分けた二重の容器を採用した。レンジで加熱した際、下のご飯の容器に蒸気がこもってコメが蒸されるため劣化しにくい。笠石部長は「開発に3年ほど要した。最後まで社内でOKが出なかったのがご飯だった」と振り返る。
ところが、2021年からセブンが販売を始めた「たんぱく質が摂れる」シリーズは、おかずの鶏肉の横にご飯が盛り付けられている。これもチルド弁当だ。状況を変えたのは味の素が販売している酵素だと、笠石部長はいう。酵素はご飯に天然の粘りを出す。
「丼もののチルド弁当が最初に登場したのは2009年頃。その頃から数えて(味の素の酵素は)すでに10代目くらい。今回の改良で、(1つの容器の中で)ご飯とおかずが分かれているタイプのお弁当でもご飯の美味しさをキープできるようになった」(笠石部長)
加えてセブンでは、低アミロース米という粘り気の強いコメを配合。粘りを強めて、ご飯を保護しているという。同社は今後、ご飯とおかずを盛り付けたチルド弁当のラインナップをさらに増やしていく方針だ。
チルド化が難しいのは「幕の内弁当」
進化を続けるチルド弁当にも死角はまだある。幕の内弁当など具材数の多い弁当だ。
具材によってレンジ加熱に必要な時間は異なる。ある具材は熱すぎるほど温まっているのに、ほかの具材はまだ冷たいといったケースは、多くの人が経験していることだろう。レンジ加熱が必須のチルド弁当で、この問題をどうクリアするか。加熱時間が延びるほどご飯の味も落ちていく。
具材が増える分だけ、製造工程では人の手もかかる。人の手で具材を詰めると、それだけ衛生面の維持が難しくなる。結果として消費期限を延ばすハードルも上がる。セブンではカツ丼などの卵とじを行う丼もの専用ラインを開発し、人の手が入る工数を大幅に減らすことで消費期限の長期化を図っているほどだ。
徐々に広がってきたチルド弁当。さらなる進化へ、コンビニチェーンが開発にしのぎを削る状況が続きそうだ。
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