ウクライナ危機が日本の「対岸の火事」ではない訳 小野寺元防衛相「自国は自国で守るスタンス必要」

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以下、番組での主なやりとり。

小野寺五典氏(元防衛相):なぜロシアはこれほど怒るのか。ナポレオンが攻めてきたとき、ヒトラーが攻めてきたとき、ロシア周辺にバッファーとなる国があったので防げた。これが戦略的な基本だ。そのバッファーの国が次々とNATOに入り、ロシアを攻めるミサイルを配備されることがロシアにとっていちばん恐れていること。このバッファーをどう保つかが解決策になる。ただ、私は今のアメリカの姿勢が少し心配だ。トランプのときは、アメリカの軍事アセットを周辺に配備して、力を形で示した。今回バイデン大統領はそれをしないとなれば、プーチン大統領から見れば「あ、口先だけだな」と。ワシントンの専門家は「トランプのあとの世界はSENGOKUJIDAI(戦国時代)になる」と言う。日本語の「戦国時代」という言葉で。なぜかというと「群雄割拠になる」と。実は、こういうことがアフガンでも起きているし、今回ウクライナでも起きている。もし台湾で起きたらどうなのか。私たちはそれを心配している。

ウクライナ周辺ロシア軍展開地図と畔蒜泰助氏(写真:FNNプライムオンライン)

軍縮交渉と同盟の義務

橋下徹氏(番組コメンテーター、元大阪府知事、弁護士):緊張感が高まって、「もうだめだ」と言ったところから軍縮は始まる。

小野寺元防衛相:(軍縮)交渉はそうだ。お互いが強い立場にあるからこそ交渉ができる。

畔蒜泰助氏(笹川平和財団主任研究員):ロシアの次の一手はおそらくベラルーシへのミサイル配備という形になると思う。核搭載可能なミサイルも当然含まれる。場合によっては、開発が進む地上発射型の極超音速ミサイルなども含めて配備される。その狙いは要するに中距離ミサイル問題だ。アメリカは実は、中国との戦略的競争のためにアセットをできるだけアジアに集めたいと考えているが、それをロシア側が配備すれば、欧州と中国に分断される。ロシアはアメリカとの交渉でおそらくそこを狙っている。

小野寺元防衛相:ハイブリッド戦は平たく言うと、戦わずして勝つという形だ。台湾も東アジアもどう見ているか。ロシアがああいう形でウクライナに侵攻し、本来応援してくれるかなと思っていたNATOが二の足を踏んで外交の話をしている。理由は、ウクライナがNATOに入っていない、同盟として守る義務がないということ。では、台湾のことを考えるとどうか。アメリカは台湾関係法の範囲で武器は供与する。しかし、日米同盟のように守るとまでは言っていない。

台湾の人の中に「自分たち、結局見捨てられる」という話が浸透してくると、やはり中国と仲良くしようかという勢力も出てくる。実はもうすでに東アジア、台湾周辺ではハイブリッド戦が行われていると考えるべきだ。

(写真:FNNプライムオンライン)
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