わざと注目回避?首相「勝負の会見」17日開催の謎 五輪への関心高まると予想された日に設定

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そもそも、これまでの「首相コロナ会見」は、政府がコロナ対策で緊急事態宣言発令など重要な決定をした際に実施されてきた。菅氏も政府対策本部の方針決定を受けて、専門家代表の尾身氏と並んで記者会見するスタイルが定着していた。

しかし、岸田首相はあえて対策本部開催前日の17日に、関係閣僚や都道府県知事との協議を踏まえて政治決断した内容を、記者会見で説明して質疑に応じるという形に変えた。それにより、会見での尾身氏の補足説明も必然性を失う結果となった。

もともと、岸田首相は当初から、尾身氏をトップとする感染症専門家集団の政府部内の位置づけを疑問視していた。このため「専門家の意見はしっかり聞くが、それはあくまで参考意見で、決めるのは首相」(側近)との判断を固めていたとされる。もちろん、「菅氏の失敗を他山の石とした」(同)ことも否定できない。

そうした中、17日午後7時に始まった岸田首相の会見は、これまでと同様にNHKが全国を視聴対象とする番組「ニュース7」の枠内で生中継した。ただ、中継を打ち切ったタイミングは、菅政権時代よりも10分あまり早い午後7時半だった。

もちろん官邸ホームページなどでのネット中継は、従来同様に1時間あまりに及んだ会見終了まで続いた。ただ、NHKの生中継終了後のネットでの視聴者数は、過去の菅会見とは比較にならないほど少なかったとされる。

菅氏とは異なる会見での対応

17日の会見の進行状況を仔細に検証すると、冒頭発言は約15分間、その後の質疑は約45分間で、1人1問・再質問なしとのルールもまったく同じ。冒頭発言で左右のプロンプターをそのまま読み上げるスタイルも変わらず、司会役の内閣広報官が「次の日程」を理由に約1時間で質疑を打ち切るのもこれまでどおりだった。

ただ、菅氏のコロナ会見での対応との違いは、指名された記者の質問をメモして、質問者の顔をみながら、丁寧に自分の言葉で説明するよう努めていた点だ。しかも、尾身氏がいないため、岸田首相自身の応答時間が倍増したことも間違いない。

その一方で、最大の焦点のオミクロン株感染爆発とそれへの対応での岸田首相の説明は、状況の羅列が多く、具体性に欠けた。ことさら「自らの決断」を繰り返したが、ネットでの視聴者の書き込みには、「早く退陣することが最善の対応」などの厳しい声があふれた。

菅政権時代には、こうした厳しい書き込みも政界で話題となり、菅氏の棒読み応答や司会役の恣意的な質問者の差別化なども問題視された。結果、コロナ会見のたびに「内閣支持率下落」につながっていたのが実態だ。

もちろん、ここにきて岸田内閣の支持率も下落が目立つ。ただ、コロナ対策も含め、一定の国民の支持は底堅く、現状でも菅内閣後半の内閣支持率よりはるかに高い。その理由も「人柄が信用できる」が多く、その点でも菅氏とは対照的だ。

会見ではまん延防止等重点措置の全国的適用の際などに、なぜ本格的な記者会見を開いて国民に協力を呼びかけなかったのか、との指摘も相次いだ。これに対し岸田首相は「60回もぶら下がり会見を開いた。しかも、質問には丁寧に答えている」とこちらも菅氏との対応の違いを力説した。

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