外国人傷つける日本の「技能実習制度」決定的欠陥 ベトナム人実習生の暴行事件はなぜ起きたのか

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しかし、実習制度はそれ自体が人権侵害だ。それは、外国人労働者を日本に「迎え入れる」ことで発展途上国にノウハウを惜しみなく提供するという前提に基づいているが、実際には安い労働力を利己的に入手するための制度になっているということは、この制度に詳しい者に限らず、もはや多くの人が指摘しているところだ。

このような不公平な制度の乱用をなくすために2018年に改革が行われ、OTITによる監理団体の認定取り消しも増加してはいる。だが、「実習制度の理念は1993年に設立されたときから改善されていない」と、特定非営利活動法人「移住者と連帯する全国ネットワーク」(移住連)代表理事であり、外国人労働者を支援してきた鳥井一平氏は主張する。「外国人技能実習生問題弁護士連絡会」事務局長を務める弁護士の高井信也氏も、「政府が実習制度の廃止を本気で検討しているかは疑問がある」と話す。

技能実習制度は、雲が雨を運ぶように人権侵害を広げている。ランさんのような外国人労働者は、母国と日本の間に挟まれ、押しつぶされている。労働者を送る側の国は、労働者に対して送り出し機関が日本では道義的にも法的にも受け入れられない内容の契約を課すことが多い。

これらの契約は日本の法制度外で結ばれるが、その条件は日本語に翻訳されており、現在日本で活動している5000の民間の監理団体に周知されている。鳥井氏は、「人権を尊重する監理団体はほとんどない」と言う。

実習生が働き先を選べない「不条理」

ベトナムの送り出し機関とベトナム人労働者との間で交わされた契約書のうち、筆者が閲覧したものでは、ベトナム人労働者が妊娠したり、エイズに感染したり、不法就労者に話しかけたりした場合、国外退去になるとされていた。

ベトナムの送り出し機関と、ベトナム人労働者間で交わされた契約書(移住連提供)

ランさんのような実習生は、「実習」先の会社を選ぶことができず、自分の意思で退職することもできないため、会社と実習生との間で虐待が起きやすい関係ができる。

「日本での現行の実習制度は、奴隷制度や人身売買に近いものがある。会社は労働者を選べるが、労働者側は会社を選べない。このような不平等な関係は、善人を悪人にしてしまう。外国人労働者に対する権力から、経営者は必ず増長してしまう」と、鳥井氏は語る。

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