【産業天気図・鉄鋼】原料高分の価格転嫁進まず、電機の需要も反動減。10月以降は「曇り」続く

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10年10月~11年3月 11年4月~9月

鉄鋼業界は2010年10月から1年通して「曇り」にとどまる鈍い景況感になりそうだ。原料高分の価格転嫁が進まずマージンが悪化、自動車に加え電機の需要反動減もある。

国内粗鋼生産は、09年2月の月産547万トンを底に回復を見せており、10年5月から連続で900万トン超えを記録中だ。各社の高炉は相次いで再稼働し、稼働率も95%に達している。JFEホールディングスは休止中の福山第3高炉の再稼働も検討中だ。自動車や電機向けに加え建機なども上向いており、何よりアジア諸国向けの輸出が力強い。

主要各社の業績については、10年4~9月は原料高に対する鋼材価格への転嫁が遅れはあるものの大幅に改善。高炉大手では新日本製鐵が数量増のメリットを享受し大幅な黒字回復を果たすほか、鋼材輸出比率が49%に達したJFEホールディングスもアジア向け中心に増勢が続く。

神戸製鋼所は、高炉に加え中国での建機事業が絶好調。銅・アルミも回復し、期初の4~6月から好発進となった。また、今期大幅な経常赤字に陥った住友金属工業も主力のシームレスパイプが数量の回復に続き値戻しも進むうえ、前期巨額赤字だった持分のシリコンウエハ事業の業績も改善する。

また、建材用途が中心の電炉は、依然販売数量の低迷は続くものの、原料高を受けた高炉材の価格引き上げが進んだこともあり、H形鋼などで製品価格の引き上げが進んだ。一方で、電炉材の原料である鉄スクラップ価格は期初こそトン4万円に達する高値圏にあったものの、じりじり下げて7月には3万円も割り込んだ。このため、前期赤字の東京製鐵なども、メタルスプレッド(販売価格と原料価格の差)の改善が鮮明だ。また、同社では需要の強い薄板生産も本格化する。田原新工場の償却負担をこなし黒字化の見通しも出してきた。

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