減らない鉄道踏切事故、知っておきたい「回避術」 「鳴ったら渡らない」基本がなぜか守られない
一般の歩行者であれば、遮断桿をくぐるか跨ぐかで逃げてしまえばいい。ところが、なぜか踏切内から抜け出すのをあきらめてしまう人もいる。過日、踏切で列車を待っていたら、踏切を渡りきれず線路内で立ち尽くしている人に出会った。「踏切の外に出られない」と思い込んでしまっているのだが、その踏切は遮断桿の先の部分を折ることができる構造だったので、踏切内で待っている人に声をかけ、遮断桿の先を折って踏切の外に出てもらった。
この折れる構造の部品を調べたところ、「屈折ユニット」という名前がヒットした。上の方向だけに折れる構造で、列車や踏切待ちの人や車などにぶつかってしまわぬよう、横の方向には折れないようにしているのがミソらしい。もっとも、この「屈折ユニット」がすべての踏切で整備されているわけではない。
踏切を安全にするための製品や工夫もあるのだが、危険と判断したら踏切の近くにある非常ボタンを躊躇なく押してしまって構わない。列車の運行を妨害するような悪質なものでなければ、非常ボタンを押してとがめられることはない。
鉄道会社も啓蒙に努めており、鉄道のイベントで非常ボタンを押す体験ができる機会を設けているところもある。京都鉄道博物館では踏切の実物があり、非常ボタンを押すと、特殊信号発光機が赤く点滅して列車に注意を促すところまでが再現されている。先日、京都鉄道博物館に行ったところ、子供が次々と非常ボタンを押していたが、「子供の遊び」が大人の啓蒙にもつながるのだろう。
京都鉄道博物館の非常ボタンは、時間が経つと自然に復旧する仕組みだ。だが、線路脇にある「実物」のほうは、一度押すと復帰は別のボタン(復帰ボタン)を押す必要がある。ただ、いたずら防止のため、復帰ボタンの位置は秘密になっている。
踏切の障害物をチェック
踏切内の危険を知らせる工夫はほかにもあり、鉄道会社でも大きな踏切では踏切障害物検知装置を整備している。
障害物の検知にはいろいろな手法があるのだが、既存のものはレーザー式が多数派で、目に見えない線によって障害物の検知が行われている。最近では、3次元レーザーレーダ式(3D式)やレーザーセンサ式と呼ばれる新タイプも登場し、踏切の平面全体を監視する方法が登場した。さらに、踏切の監視カメラの画像をAIで解析し、障害物の有無を判定するものも現れている。
ただ、踏切障害物検知装置が障害物を検知しない事例もあり、逆に雨や雪、小動物を障害物と検知して誤動作を起こしたりもする。改良によって精度が上がっているが、踏切障害物検知装置を設けたからといって完璧になるものでもない。
踏切の安全設備は性能の良いものが次々と出ているのだが、こうした安全設備の整備が進んでいるのはJR・大手私鉄など、資金力な潤沢な事業者ばかりだ。東急電鉄のように、全踏切で踏切障害物検知装置を整備した例は稀有と言えるだろう。地方のローカル線などでは安全に関する整備すらままならず、補助金を得てようやく整備できるのが現実となる。
それとともに、いくら設備を良くしても、踏切を使う人が付いてこなければ意味を失う。結局は人の問題になるのだが、自分が事故の被害者・加害者となるのを避けるためにも、「止まる・見る・聞く」・「鳴ったら渡らない」という基本的な習慣は身につけておきたい。
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