減らない鉄道踏切事故、知っておきたい「回避術」 「鳴ったら渡らない」基本がなぜか守られない

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答えは30秒程度だ。

これには法的な根拠があり、「鉄道の技術上の基準に関する省令」の第62条に基づく「解釈基準」に詳細が記されている。そこには踏切に関する数々の決まりごとが記されており、時間のところを抜粋すると以下の条文がある。

 5 踏切警報機は、次に掲げるところにより動作するものであること。
(3) 警報の開始から列車等の到達までの時間は、30秒を標準とすること。この場合において、当該時間は、20秒以上であること。

踏切が鳴ってから列車が来るまでの時間は30秒が基本だが、20秒もあれば法律上はOKということになる。つまり、踏切が鳴ってから20秒以内に踏切から立ち去らないと危険ということになろう。

参考までに、踏切の警報機が鳴り出してから遮断桿と呼ばれるバーが閉まるまでの動きを紹介する。幅の広い道路では遮断桿は左右に分かれていて、入口側を先に閉め、次いで出口側を閉める動作となる。

警報機が鳴り出した踏切。入口側が閉まり、続いて出口側も閉まる(筆者撮影)
小さな踏切では、手前と向こう側の遮断桿が同時に動く(筆者撮影)

ところが、幅の狭い道路では遮断桿は片側1本なので、線路の両側に付く遮断桿は同時に閉まってしまう。幅の狭い踏切では「鳴ったら渡らない」を習慣づけないと、踏切の中に閉じ込められて自分の身に危険が及ぶと考えたほうがいい。

「締め切り効果」というべきか、実際には踏切が鳴ってから渡り始める人もいる。ある映画のワンシーンだが、サイボーグが自動車の運転を覚えるシーンがあり、人間の運転を真似て「青は進め、赤は止まれ、黄色はスピードを上げろ」と覚えてしまった。架空の話だが、人というものはそんなものだろう。

ただ、時間に迫られたあわてた行動は自分だけでなく、人を事故に巻き込む確率も上がるのも確かだ。「鳴ったら渡らない」は習慣づけたほうがいい。

閉まった踏切は開けられる

踏切の中にいて、踏切の警報機が鳴り出してしまった場合はどうすればよいのだろうか。前述の通り、20秒以内に踏切から抜け出さないと最悪の事態となる。速やかに踏切の外に出たいところだが、その前に遮断桿が閉まってしまうとパニックになってしまう可能性もある。

意外な事実だが、閉まっている踏切は人の力で開けることができる。踏切にはクラッチやバネの機構が入っているのだが、これを実際に開けようとすると大人でも大きな力を必要とする。

だが、車で抜け出す場合は、車の形を利用して遮断桿を上に逃がすようにすれば、車を前進させるだけで大体抜け出すことができる。これがうまくいかず、遮断桿を折られて鉄道会社が怒ったという話を聞くが、実際に折られている事例を見ると、大型車などで遮断桿が車体に引っかかって遮断棹が上に上がらなかったことが原因となっているようだ。

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