プロの"スジ屋"が教える「ダイヤ教室」のリアル感 東武に京急、臨時列車運行で「レア体験」プラス

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京急のダイヤ作成体験は「初級編」との位置付けだったが、列車番号の記号が車両の所属会社によって異なることを説明すると、 “クラスの優等生”たちの好奇心に火が付いたようだった。

京急の「ダイヤグラム作成体験」の様子(記者撮影)

後半の質問コーナーでは「土休日朝の『667H』(京急久里浜発・品川行き)はなぜ自社線内なのに『C』でなく(都営乗り入れ車の)『H』なのか」といった日ごろの疑問が飛び出し、その都度、京急の列車運行を知り尽くす社員が「基本的には3ドア車での運用なので、(自社線内だけを走る)2ドア車と区別する意味合いがある」などと丁寧に解説していった。

「アプリで検索」は便利だが…

鉄道のダイヤを利用者が100%満足できる仕上がりにするのは難しい。そのため鉄道各社はダイヤ改正のたびに社内外と調整しながら「完璧」に少しでも近づける試行錯誤を重ねている。ある担当者は「速達性も大事だが、経路検索アプリを使う人が増え、昔より定時性が求められている。ダイヤに終わりはない」と話す。そうした一面を現場の社員に語ってもらい、利用者の理解を深めることは、ファンの拡大にもつなげられる。臨時列車の運行と組み合わせた「レア体験」を売りにできるのも鉄道会社ならではの強みだ。

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メリットはほかにもある。東武のダイヤ作成教室では、乗務員カバンの中身の説明などのためにベテランの社員が複数待機していたが、「自分たちもダイヤを教えたくなった」と感染予防対策のためのフェイスシールドを急きょ調達し、机を回ってアドバイスする場面があった。普段は直接利用者と接する機会が少ない社員でも、自らの仕事に対するモチベーションを高める機会になるといえそうだ。京急の工場見学は現場スタッフからの提案で実現した企画という。

最近では鉄道を利用する際、冊子の時刻表を参照する機会が少なくなった。目的地までのルートはスマートフォンの経路検索アプリが教えてくれる。だが、ダイヤ作成教室などでの社員とのコミュニケーションを通じ、一見無機質な数字にも「スジ屋」たちの工夫が込められていることを知れば、普段何気なく乗っている列車の楽しみ方が増えるに違いない。

橋村 季真 東洋経済 記者

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はしむら きしん / Kishin Hashimura

三重県生まれ。大阪大学文学部卒。経済紙のデジタル部門の記者として、霞が関や永田町から政治・経済ニュースを速報。2018年8月から現職。現地取材にこだわり、全国の交通事業者の取り組みを紹介することに力を入れている。

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