「仕事できない」罵倒され続けるシングル母の苦悩 離婚後に「軽度知的障害とADHD」が発覚した

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聞いていると算数障害のようだ。数えることが特に苦手で、それと同時に別の仕事をする、手順を覚えることができなかった。パチンコ店は新卒入社の正社員であり、上司による厳しさはコンビニの比ではなかった。お金がかかわる景品の数え間違いは、社員としてもっともやってはいけないミスである。

「みんなにふざけていると思われて、怒られまくって1年間しか続きませんでした。私、数字に弱い。そのときは気づいてなかったけど、どうしてできないのって悩みました。すごく悩んだ。どうしてだろう、どうすればいいんだろうって。結局、解決しなくて、ずっとトラブルばかり。その頃から鬱みたいになって、精神的もおかしくなりました」

パチンコ店の寮に住んでいた。出勤前にお腹が痛くなることからはじまり、部屋から出られない、眠れないと不調が続いた。クリニックを受診すると、鬱と診断された。薬を飲みながら仕事を続けた。それでも、トラブルまみれで1年間働くのが限界だった。

「パチンコ屋は客層がすごく悪い。お客さんから怒鳴られたことは数え切れない。誰かから怒鳴られすぎてストレスばかり。全部に口を出す親に対するキモチも限界にきていて、実家にはどうしても帰りたくなかった。そのときパチンコ屋の同僚と付き合っていて、その人の家に転がり込みました。しばらく同棲して結婚、妊娠です」

子どもができてからおかしくなった

24歳で結婚、26歳で出産、27歳で夫から言い渡されて離婚している。シングルマザーとなってからは仕事と子育てで精一杯であり、再婚どころか恋愛しようにも、精神的にも金銭的にも余裕がない。

「結婚して2人のときはそんな問題なかった。子どもができてから産後鬱とか、私が家計を握ったとか、いろいろ重なってヒステリックになって喧嘩とか。怒鳴り散らしたり、暴れたり。旦那さんが家に帰ってこなくなって、泣いたり、キレたり。あと衝動買いでいろいろ買っちゃったり。自分に問題がありました」

妊娠してからアルバイトは辞めた。専業主婦になった。夫の収入は手取り25万円で家計のやりくりする。お小遣い5万円、家賃6万円で、あとの金額は奈津美さんが管理することになった。

「家計のやりくりっていわれても、どういうのがやりくりなのかわからなくて。使っちゃって家賃が足りないみたいな。ブランド物のバッグとか化粧品とか買ったり。貯金はまったくできませんでした。それとご飯はまったく作れないので外食です。自炊できない。ファミレスとか、コンビニとかが毎日。作ってもすごくまずくて、とても食べられなかった」

離婚したのは子どもが1歳のとき。夫が離婚したいといってきて、「わかった」と返答した。やっぱりと思った。離婚が決まったとき、子どもは隣ですやすやと眠っている。「この子を育てるのは私しかいない……」と覚悟した。

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