「仕事できない」罵倒され続けるシングル母の苦悩 離婚後に「軽度知的障害とADHD」が発覚した

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不安を抱えるのは、これまで点々とした職場で数々のトラブルを起こしたことが理由だった。現在の職場でやっと平穏に働ける環境を手に入れたが、それを失ってしまったら親子で路頭に迷ってしまうのでは、という不安である。

「いままで働いてきた職場ではいろいろあって、本当になにかおかしいと病院に行きました。発達障害と軽度知的障害って診断をされました。やっといままで自分に起こったことが納得できました。本当にずっとツライことばかりでした」

仕事で失敗続きだった奈津美さんは、4年前にADHDと軽度知的障害と診断されている。

奈津美さんにいままで、どういう状況だったのかを聞いていく。小中学校は勉強についていけなかった。成績は小学校低学年から美術以外、1と2しかなかった。学力があまり問われなかった芸術系の高校、短大に進学。そして、短大生のときに親の勧めでコンビニでアルバイトをはじめた。勉強と同じく、仕事もできなかった。やる気持ちはあっても、求められることがどうしてもできなかった。いつも、怒られている、怒鳴られている、そして人間関係が壊れていく――仕事をはじめてから常になにかに怯え、追い詰められるようになった。

「仕事は学生時代のコンビニからうまくいきませんでした。マルチタスクっていうんですか。仕事の同時進行が全然できなかったです。1つのことをしていたらそっちに集中しちゃう。レジをやっているとき、お客さんがいなくなったら売り場の陳列とか、掃除とか、全然できない。1つひとつの仕事を覚えることができなくて、レジのやり方もわからないし、怒られているうちに人間関係がどんどん悪化して……」

小銭をちゃんと数えられない

夕方から深夜にかけての勤務のとき、新聞の返品をいわれた。レジをやりながら、余った新聞を数えて書いて規定の場所に置くという内容だ。何度いわれてもレジをしながら、新聞を数えることができなかった。

ある日、必死に新聞を数えているとき、お客が大行列になった。「店員、早くしろよ!」と怒声で気づく。行列をつくっているお客は、みんな怒っている。慌ててレジに戻ったら、おつりを間違えた。さらなるミスとクレームが重なって、夜のコンビニは機能停止のパニック状態になってしまった。

「慌てると小銭をちゃんと数えられない。それと、レジ締めに時間がかかった。私がシフトに入ると、一日何度もお客さんが大行列になっちゃう。いつも、ペアの人に文句いわれまくっていました。公共料金払うとか、コンサートのチケットをだすとか、たくさんありすぎて無理でした。結局、全部覚えれなかった。なにもできなかった。1年半くらい頑張ったけど、働くことができなくなりました」

数々のトラブルを起こしたコンビニでは、最終的に全スタッフから「一緒に働きたくない」といわれた。解雇にはならなかったが、スタッフ全員に拒絶されたので働くことができなくなった。近所のファミレスに求人があった。コンビニを辞めてそこで働くことになった。

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