トヨタが東大で力説、「僕らを助けて下さい」 若者のクルマ離れに危機感を抱くメーカー
授業の中で福市氏は「これまでのトヨタは多種多様な車を取りそろえた、いわば大型百貨店や量販スーパーのような存在だった。ここに来れば何でも買えるが、ここでしか買えない独自の商品が少なくなっていた」と、自社の抱える課題を率直に振り返った。
そこで取り組んてきたのが「単にたくさんの商品を扱うのではなく、選りすぐった品揃えで高級なモノから安価なモノまで取りそろえる、”セレクトショップ”を目指す」ことだったという。選りすぐりの中で存在感を放つブランドが今年で誕生して25年が経つ高級車「レクサス」だろう。
そのうえで、軽自動車を除く登録車で5割近いシェアを持つ日本と、シェアが低い欧州や中国とではデザイン戦略を変えていることを明かしたり、目の錯覚を利用したデザインの手法や「レクサス」の新モデルのデザイン意図などを詳細に話すなど、さまざまな側面からクルマの奥深い世界を伝えた。
「日本の自動車産業を助けて下さい」
最初は緊張した面持ちだったが、トークセッションに移る頃には福市氏の口も滑らかになり、「いま、車はつまらないといわれている。私の学生時代、車はときめきやドラマがあった。ファーストキスは車の中だった」と”告白”。「車でのデートを彼氏にリクエストして欲しい」と、笑いを誘う一幕もあった。
あくまでクルマやモノ作りの魅力を伝えるのが目的だが、福市氏のパーソナリティも色濃く出た授業だった。同氏曰く、「小学校、中学校の成績はオール2で、体育と図工だけは5」。トヨタでデザイン一筋でやってこられたのは、「『自分はできない』という思いが逆に強みになった。だから失敗を繰り返してもへこたれなかった。なぜなら、それ(デザイン)でしか生きていけなかったから」だという。
そして、福市氏は「将来のリーダーとなる東大生の皆さん、これからは左脳(論理脳)だけでは世界と戦っていけない。右脳(感覚脳)を鍛えて下さい。若いうちに挫折して下さい」と学生らを叱咤した後、「僕らトヨタに限らず、日本の自動車産業を助けて下さい」とアピールした。
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