「コロナ禍の相続」が大トラブルに陥る納得の理由 実は「遠方の兄弟が集まれない」など問題が山積

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最終的には弁護士が内容証明郵便を送付し、ようやく長女と連絡がとれて相続意思の確認ができましたが、相続税の申告期限が迫り、Bさん一家もかなり焦っておられました。

ただでさえ、「相続は争族」といわれるほど、相続にトラブルはつきものです。そして相続手続きにはかなりの手間や費用がかかりますから、役割分担や金銭的負担については、当事者でしっかり話し合いをして進めるべきところです。

しかしコロナ禍では、葬儀の直葬や法要の簡素化により相続人が集まりにくくなり、意思の疎通が難しくなっています。人と人とが会う機会が減っていることで、新たなトラブルが起こりやすくなっているのです。

新型コロナの影響で、各種の手続きに以前より時間がかかる傾向があることにも注意が必要です。

「密」を避ける役所で手続きが遅れがちに

金融機関などの手続き先窓口が、「密」を避けるために来店予約を必須にしたり、郵送やオンラインでの手続きを推奨したりしています。このことで、各種証明書の取得や提出にも手間や時間がかかるようになってしまいました。これは、個人で手続きを行う場合も、専門家が依頼を受けて行う場合でも同様です。

前述したBさん一家のように、相続人が遠隔地に住んでいてなかなか連携が取れないことも多々あります。さらに、相続人が海外に居住している場合、コロナ禍での入国制限で自由な往来が難しくなっており、手続きが長期間滞ってしまうケースもあります。

海外に住む相続人が現地公館で必要書類を取得しようとしても、国内に比べ、より時間がかかってしまいます。各種手続きでよく使用する印鑑登録証明書1つとっても、それに代わるサイン証明(署名証明)は現地公館ではすぐに発行できなかったりするのです。

国税庁もこうした状況をふまえて、新型コロナウイルス感染症拡大による「申告・納付期限延長申請」を認めるなどの対応をとっていました。しかし、相続税の申告は個別指定による期限延長です。期限までに申告・納付等することができない理由を期限延長申請書に記載し、提出するという手続きが必要になってしまうので、注意が必要でしょう。

「コロナで申告期限が延長になったと聞いたから、まだ大丈夫だろう」などと、誤った解釈をしたままで何も手続きをせずに申告期限が過ぎてしまい、延滞税を支払う羽目に陥るリスクもあります。

このようにコロナ禍における相続は、「相続人が集まれない」「手続きに時間がかかる」という2つの理由から、早め早めの対処が必要になってきているのです。

さて、長引くコロナ禍の影響は相続手続き面だけにとどまらず、相続財産の時価変動という形でも表れています。

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