鳥居薬品に「物言う株主」が噛みついた真の理由 「プライム上場は問題」、驚きの株主提案が発覚

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そのため東証は、プライム市場を選択する企業の基準として「流通株式比率35%以上」を求めるなど、親子上場の解消を間接的に促してきた。その結果、親子上場を諦め、完全子会社化を選ぶケースも出始めている。

例えばジャスダックに上場していた川重冷熱工業は2021年7月29日付で上場を廃止し、親会社である川崎重工業の完全子会社となっている。また、セコム上信越やミサワホーム中国などもそれぞれ親会社が完全子会社化している。

また親子上場の解消までには至らなくてもトヨタ紡織の株を親会社のトヨタ自動車が放出したり、野村総合研究所の株式をやはり親会社の野村ホールディングスが放出したりするなど、親子関係の希薄化が進んでいる。

親子上場に噛みつくアクティビスト

「親子上場は欧米ではほとんど見られない日本特有の資本政策。これは上場子会社の少数株主に対する親会社の善管注意義務を曖昧にする日本の市場制度の不備によるものだが、ガバナンス面や株価形成面でも問題が多く、海外マネーを呼び込もうという中ではすぐにでも解消すべき。東証の市場改革でもっと加速すると思ったのだが・・・」(投資ファンド関係者)という投資家の声は根強くある。

リムのみならず、アクティビストの中には親子上場を問題視し、解消するよう求めている所も少なくない。事実、アクティビストのエフィッシモ・キャピタル・マネジメントも鳥居薬品株の5%余りを保有し揺さぶりをかけているもようだが、鳥居薬品は「親子上場の解消については特に検討していない」とコメントする。

JTと鳥居薬品のように、親子上場の解消に向けて消極的な企業は少なくなく、今後、さまざまなアクティビストから狙われる企業も増えるだろう。東証が各企業の所属市場を発表した直後に突き付けられた今回の株主提案。波紋は、今後ますます広がりそうだ。

田島 靖久 東洋経済 記者

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たじま やすひさ / Yasuhisa Tajima

週刊東洋経済副編集長。大学卒業後、放送局に入社。記者として事件取材を担当後、出版社に入社。経済誌で流通、商社、銀行、不動産などを担当する傍ら特集制作に携わる。2020年11月に東洋経済新報社に入社、週刊東洋経済副編集長、報道部長を経て23年4月から現職。

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