仏マクロン大統領「反ワクチン論者」猛烈批判の訳 波紋を呼んだ発言の背景には4月の大統領選

拡大
縮小
フランスのマクロン大統領(写真:Valeria Mongelli/Bloomberg)

フランスのマクロン大統領の発言が波紋を広げている。同国の新聞『ル・パリジャン』が1月4日付けの紙面で大統領のインタビューを掲載。この中で、同氏は新型コロナウイルスのワクチン未接種者に対して「無責任な人間はもはや国民でない」と強く非難。「彼らをうんざりさせてやりたい。とことんまでやり続ける」などと主張した。

特に問題視されたのは「うんざりさせてやりたい」という表現。排泄物を意味する「merde」を語源とする「emmerder」というスラングを使ったのだ。フランスで長く暮らす日本人に聞くと、「くそったれ」という意味。同国の民間ラジオ局「RTL」のフィリップ・ドヴァ記者は「日常会話では頻繁に使われる言葉であり、さほど下品ではないが、大統領が公の場で口にするのは適切でない」と話す。

深刻な感染拡大に直面するフランス。下院議会では飲食店利用などにあたり、ワクチン接種の証明として提示を義務付ける「ワクチンパス」導入法案の審議が行われていたが、野党議員は「フランス人を嫌な気分にさせる発言を支持することはできない」などと一斉に反発。審議は紛糾し一時、中断した。

4月の大統領選へ出馬する極右政党、国民連合のル・ペン党首も地元テレビのインタビューに答え、「危機に直面したときに必要なのは国の結束であり、分裂ではない」と大統領の姿勢を非難。同じく大統領選へ立候補した「極右」の政治評論家、ゼムール氏は「馬鹿げており、幼稚」などと一蹴した。

世間の反応は?

フランスの調査会社エラブの世論調査では、マクロン大統領の発言にショックを受けた人が全体の53%に達した。このうち、35%が「非常にショックを受けた」、18%が「ショックを受けた」と回答した。

衝撃が広がったのは、「エリート社会」と称されるフランスで大統領はその頂点に位置する存在だからだ。歴代大統領の多くが国立行政学院(ENA)を始めとする高等教育機関の「グランゼコール」で研鑽を積んだキャリアを持つ。マクロン氏もこれまでに数多の政治家や高級官僚を輩出したENAの出身である。

次ページ過去の大統領も同様の「失言」をしたが…
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【逆転合格の作法】「日本一生徒の多い社会科講師」が語る、東大受験突破の根底条件
【逆転合格の作法】「日本一生徒の多い社会科講師」が語る、東大受験突破の根底条件
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT