30代で伸び悩む人が知らずとかかる「呪い」の正体 特定の企業文化や業務に染まりすぎるのは危険

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もちろん、その会社で仕事を続けるうえでは、会社への忠誠心や愛はあったほうが何かとうまく運ぶでしょう。それを否定するつもりはありません。ただ、あまりにも強力な「圧」を受けながら過ごしているうちに、その会社でしか通用しないやり方にどっぷり染まってしまうとしたら、それはかなり心配です。

終身雇用が当たり前だった時代ならともかく、現代のビジネスパーソンは入社した会社でずっと働くことは、ほぼ望めません。いつかきっと別の企業、外の世界に出て行かざるを得ない。そのときに、あまりにある特定の企業文化に染まりすぎている人は、相当苦労するのではないかと思うのです。

「今まではこう」という思考をいったん手放してみる

その会社特有の環境や文化に過剰適応してしまうと、その会社以外のものとのずれはどんどん広がってしまいます。

『Unlearn(アンラーン) 人生100年時代の新しい「学び」』(日経BP)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら

企業や組織など、ある特定の小さな世界だけで通じる「カルチャー(環境)対応」への過度ののめりこみが、「思考のクセ」を生じさせている大きな原因です。

とはいえ、現状の日本のビジネス環境では残念ながら長期休暇は習慣づいてはいませんし、副業もまだまだ認められないままです。脇目も振らず1つの仕事に専念することが美徳だと思われている節もあります。

ある一時期だけ「思い切って本業から離れて、違う訓練をする」といった、アスリート流のアンラーンの実践は難しいのが実情でしょう。

だからこそ、ビジネスパーソンが成長し続けていくためには、「今までこうしてきたから」「以前はこうだったから」という思考をいったん手放そう、という心がけが、大きな意味を持つのです。

柳川 範之 東京大学経済学部教授

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やながわ のりゆき / Noriyuki Yanagawa

1963年生まれ。東京大学経済学部教授。東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。経済学博士(東京大学)。現在は契約理論や金融関連の研究を行うかたわら、自身の体験をもとに、おもに若い人たちに向けて学問の面白さを伝えている。主な著書に『法と企業行動の経済分析』(第50回日経・経済図書文化賞受賞、日本経済新聞社)、『契約と組織の経済学』(東洋経済新報社)など。

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為末 大 アスリート

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ためすえ だい / Dai Tamesue

1978年広島県生まれ。スプリント種目の世界大会で日本人として初のメダル獲得者。男子400メートルハードルの日本記録保持者(2021年12月現在)。現在は執筆活動、会社経営を行う。Deportare Partners代表。新豊洲Brilliaランニングスタジアム館長。YouTube為末大学(Tamesue Academy)を運営。国連ユニタール親善大使。主な著作に『Unlearn(アンラーン)人生100年時代の新しい「学び」』(共著、日経BP)、『Winning Alone』(プレジデント社)などがある。

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