観光に高速道「走り放題」が必要なこれだけの理由 渋滞問題を引き起こす要因も距離制にあった
実は、温泉や世界遺産などの観光拠点が鉄道の駅から離れて点在する国内旅行には、高速道路を利用した周遊が一番合っており、距離制料金がそのボトルネックとなっていることは、高速道路の計画から管理までを所掌事務としている国交省はよく知っているようだ。
というのも、日本人にはあまり知られていない制度だが、日本の主な高速道路では、「Japan Expressway Pass」というサービスが利用できる。これは海外からの旅行者に限って、高速道路を距離制の料金制度ではなく、「7日間で2万400円」という定額料金で走り放題が可能になるサービスだ。2022年1月現在は、コロナ禍のため申し込みを一時停止中だが、国交省はどうしてこの素晴らしい施策を日本人には適用しないのだろう。
走り放題にしたら渋滞しないのか?
高速道路の使い勝手がよくなれば、いま以上に渋滞して困ると思われる方もいるだろう。しかし、定額制料金制度は渋滞の解消にもつなげることができる。なぜなら、高速道路が渋滞する一番の理由は、事故や工事による車線規制を除けば、「合流部への車の過集中」にあり、突き詰めれば「少なすぎる料金所の存在」にあるからだ。
1台ごとに通行料金が違う距離制料金の場合、出入口を1カ所にまとめて(以前はすべて人力で)徴収作業をする必要があった。そのため長大なランプウェイと広大な土地を要するインターチェンジ(IC)を、莫大な費用をかけて整備しなければいけなかった。結果、日本の高速道路の出入口は平均で10kmに1カ所しかなく、平均4.5kmに1カ所ある他国に比べて極めて少ない。
そのことが「多くの車が出入りし、それだけ多くの出入口が必要な都市部ほど出入口が少ない」という矛盾を生んできた。日本の高速道路は「少ない出入口に車が殺到すること」で起こる渋滞が非常に多いのだ。
日本の大動脈である東名・名神高速道路で特に大きな渋滞が発生するのは横浜町田ICと一宮ICだが、どちらも本線を降りて料金所へ向かう車の渋滞がランプウェイを越えて本線の走行車線まで連なり、走行車線の渋滞を避ける車が追い越し車線になだれ込んでさらなる渋滞を起こす。そこにそれぞれ手前の海老名ジャンクションと一宮ジャンクションから流入してくる車なども合わさって、渋滞が高頻度で起きてしまう。
以前に民主党政権で「上限1000円」の料金が、ETC搭載の乗用車に限って試験的に実施されたのをご記憶の方もいるだろう。このときは定額ではなく上限が1000円としたため、出口での精算は相変わらず必要で、高速道路の構造的な問題は何も解消されないまま。しかも土日のみで車種も限定したことで、過剰なピーク(需要の山と谷)をつくり、必要以上に渋滞を生んでしまった。
そうした限定のない定額制にすれば、料金は入り口で支払い、出口はただ降りればいいだけのため、料金所をつくる必要がなく、一般道への接続線をつくればすむので、少ない費用で前述のような渋滞多発区間にも出入口を簡単に増やすことができ、現在のような合流部への過集中も緩和できる。
なお、以前は定額制料金制度を採用していた首都高速道路や名古屋高速道路は、平均して出入口が2kmに1カ所ある。
首都高が渋滞する理由は、ほかの高速道路とは大きく異なり、「ジャンクションの多さとその構造」「合流部の短すぎる加速車線」「通常の高速道路にはない急カーブの多さ」という3点の「デザインの悪さ」に大きな原因があることも付け加えておきたい。
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