柳川東大教授「日本人が抱えるモヤモヤ感の正体」 「先が見えないから面白い事を」ライフシフト論

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今は、AIなどの技術革新が進み、よくも悪くも、私たちが当たり前のように続くと思っていた就労環境や社会構造が続かなくなっています。

私たちの将来の行動を規定していた社会のルールや社会構造が変容し、制度などのハード面が追いついていない場合もあれば、私たちのマインドが追いついていないこともあります。

これらは、言われて久しいですよね。前作『ライフ・シフト』でも取り上げられていますし、すでに多くの人が未来は今の延長線上にはないと漠然と感じています。たとえば今、企業の終身雇用がずっと続くと思っている人はもうほとんどいないでしょう。

ただ、それに代わる新しいものは何か。それが見えていないのが今です。だからどう踏み出していいかがわからない。

たとえば学び直しと言っても、どんな学校に行ってどのカリキュラムを学べばいいのか。そして学び直しを終えた先に、何があるのか。道筋が見えないからこそ、モヤモヤ感を持っている人が多いのではないかと思います。

人生を切り拓いていく先に、宝がある

こうした状況では、国が何らかの新しい仕組みを作り、安心できる政策を提示していくことが必要でしょう。一方で個人もまた、やれる範囲でトライしてみるということも現実にあると思います。

時代が変わりゆくときというのは、本当は大きなチャンスでもあります。国や企業がすべてを整備してしまった後では、そこに大きなビジネスチャンスは残りません。

不安定な状況だからこそ、今までやれなかったようなことができるかもしれないし、新しいチャンスがあるということもあるのではないでしょうか。

例えば年功序列・終身雇用が盤石であるという労働環境下では、一度会社に入ったら、たとえ活躍の場がなくても、そこで働き続けるしかありませんでした。別の選択肢はそもそも考えられなかったのです。

ですが今は、空いた時間にスキルアップをして転職をすることもできます。独立することも、ありえない選択肢ではなくなってきました。

もちろんそれは、簡単なことではないでしょう。「こういうルートをたどったら目標地点にたどり着けますよ。はい、これがパスポートです」などということはないですから。しかし、ないからこそ、切り拓いていくところに宝があるのではないかと思います。

大事なのは、楽しむこと。好奇心を持つこと。社会的開拓者になるために好奇心が必要だというより、好奇心をもって進めば社会的開拓者になれる、おのずと道は拓かれていくということではないでしょうか。

何かお題を出されて「この課題の解決策について考えろ」と言われても、つらいだけですよね。嫌々やらされたところで、期待どおりの成果は出ないでしょう。

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