産業天気図(電気機器) リストラとデジタル家電の効果で大幅増益へ
電気機器は、重電やコンピュータ、通信インフラなどの低迷が続く一方で、急拡大しているデジタル家電向け等の半導体や、海外向けの携帯電話端末が伸長。売上高自体は総じて前期比微増程度に止まる見込みながら、2001~2002年度に行ったリストラによる固定費削減効果も加わり、利益的には大幅増となる模様だ。
重電は電力会社の設備投資抑制が響き、依然低調に推移している。国内での新規大型案件は当面見込めず海外展開を強化するが、シーメンスやABB等の海外強豪を脅かすまでには至っていない。
コンピュータ関連も企業のIT投資に依然回復感はない。「ユーザー企業は投資を必要最小限にとどめており、戦略的なIT投資が伸びていない」(ITコンサル役員)。ITバブル崩壊後、技術のオープン化による競争激化とダウンサイジングによってハード機器の価格下落が続いてきたが、最近では高付加価値とされたソフト・サービス事業の競争も激しく、コンピュータ全般は前期比横ばい程度と見られている。パソコンも、まだ個人向けに若干明るさが見られる程度で、頼みの企業向けは厳しい。
通信インフラも低迷が続く。通信料と関連機器がともに格安のIP電話が普及期に入り、かつてドル箱だった固定電話網向けの通信機器事業は「壊滅状態」(通信機器大手)。一部で回復の兆しが見られる光通信関連も、収益に貢献するまで回復するのは先の話のようだ。
こうした大型機器が関わる各種事業の不振とは対照的に、半導体は急回復している。メモリはかつてのDRAMに変わり、デジカメやカメラ付き携帯電話向けの大容量フラッシュメモリ(NAND型)が日本勢の牽引役。またCCD(受光素子)、自動車やAV家電など広い分野に使われるシステムLSI等でも存在感を示す。携帯電話端末も、国内市場が停滞している中、大手メーカーは海外市場向けに活路を見い出し始めている。携帯電話事業は今後、海外戦略の巧拙が明暗を分けよう。
個別企業を見ると、日立製作所は素材事業等の貢献はあるが、IBMから買収したHDDの大赤字、重電の低調が響き、微増益程度。東芝も半導体の絶好調を北米で単価下落に見舞われたノートPCの低迷が打ち消し、増益幅は縮小に。一方、三菱電機は携帯電話等の課題事業での赤字縮小、自動車向けFAシステムの好調で堅実に稼いでいる。
NECはIT関連、通信インフラの苦戦が続くものの、好調なシステムLSI事業や、海外出荷台数を前期比5倍の約500万台と見ている携帯電話端末が貢献して増収増益。富士通は得意のソフト・サービス事業に減速の陰りがうかがえるが、2年連続の巨額リストラを経て増益が見込まれる。
【風間直樹、内田忠信記者】
(株)東洋経済新報社 電子メディア編集部
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