このような関係は別の言葉でいうと自然体という言葉に置き換えることができるかもしれません。従業員の方へのインタビューでは、地域との関係性があまりにも自然なものであるため、「地域との交流?それは、普通のこと、当たり前のこと。地域のお祭り?当然参加しますよ」などといった発言を聞くことが多くありました。このあたりは、意識的に地域貢献をしようとする一般的なCSR活動(時に、CSRレポートに書いてしまいそうな)とは大分様子が違うように見えます。
「徳」を積み続ける
かつて、松下電器産業の創業者の松下幸之助は、「徳を積むということは、隣人にその時々の自己の最善を尽くしきること」と言ったそうです。日本型サスティナブル企業はまさに、徳を積み続けてきた企業とも言えるでしょう。
企業にとって共存価値は、平時は事業運営への理解や雇用や優遇などの恩恵をもたらしてくれます。有事になり、企業が破綻しかけた時は、共存価値を棄損させないために、コミュニティの関係者から有形無形の支援の手が伸びて、厳しい時を脱する力として働くことがあります。日本型サスティナブル企業も、破綻の危機に瀕した時、それまでの共存価値が慣性として働き、資金援助や、顧客を紹介してくれるといった救いの手が差し伸べられて、厳しい時を脱したというエピソードが数多く見られます。
近年、グローバル化の流れを受け、工場や研究所、そして本社機能の一部をグローバル展開する企業が増えてきています。米国、南米、アジア、欧州、アフリカなど進出する各国で政治や経済状況、文化は千差万別です。真のグローバル企業になるということは、進出する各地域でCCV経営を実践することなのではないでしょうか。そのためには、企業理念や価値観はグローバルに統一して浸透させながらも、事業運営の具体的な場面においては、日本のやり方を押し付けるのではなく、コミュニティの多様性にあわせた共存価値を構築することが重要になってきます。
各地域で、身の丈にあった貢献活動を継続することで好循環を創り出していくのです。これが、進出先で起こりうるさまざまなリスクや有事を乗り越える時の力にもなってくるはずです。
グロービス経営大学院では、『創業三〇〇年の長寿企業はなぜ栄え続けるのか』の出版を記念してセミナーを行いますので、ふるってご参加ください。
●大阪開催 11月5日(水)
●東京開催 11月6日(木) ●仙台開催 11月20日(木)
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