三菱重工業がボーイング787向け主翼製造工程など、「名航」心臓部を公開

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三菱重工業がボーイング787向け主翼製造工程など、「名航」心臓部を公開

三菱重工業は8月27日、名古屋航空宇宙システム製作所(名航)の主力工場をマスコミ関係者などに披露した。

見学会を実施したのは、愛知県内にある大江、小牧南の両工場。大江工場では、ボーイングの新型機787向けの主翼製造工程、小牧南工場では防衛省向け戦闘機F‐15の製造工程などが公開された。また、大江工場では、2012年に初飛行を目指すリージョナルジェット機「MRJ」の客席模型も公開された。

印象的だったのは、複合材を使った787向けの主翼の製造ライン(写真)。現在はまだ月産2~3機程度の生産量で、工場内は閑散としていたが、主翼は航空機の最も重要な部品の1つであり、同社の自信と期待がうかがえた。これまでに29機分を生産したが、787は800機を超える受注残を抱えている。皮肉にも、見学会の当日、米国のボーイング本社から787の初号機納入(全日空向け)が年内から来年2月頃に延期になる、と何度めかの遅延が発表されたが、初号機納入後は生産量が急拡大しそうだ。

三菱重工の航空宇宙部門の売上高は、2010年3月期で5002億円、営業損益は64億円の赤字だった。売上高のほぼ5割は名航の生産品が占める。また、同部門を受注分野別に見ると、防衛省向けが6割近いものの、同省向けの需要は今後も右肩下がりが続く。このため、赤字が続く航空部門を黒字化させるには、民間向けの売り上げを増やすことがポイントだ。787向けは今後数年、確実に売り上げ増が見込めることから、特にMRJの受注をいかに増やすかが、カギを握るといえよう。

MRJはこれまで、全日空向けで25機、米国の地域航空会社、トランス・ステーツ・ホールディングス社向けで100機を受注した。三菱重工では、今後約20年で世界のリージョナルジェット機(60~99席)で5000機以上の新規需要を見込み、1000機の受注を目指している。見学会では、ブラジル・エンブラエル社のライバル機と比べて燃費が20%よく、客室の広さではカナダ・ボンバルディア社のライバル機を上回る点が強調された。

航空機のビジネスは、通常ドル建てであり、吉田愼一・執行役員名航所長は、「いまの円高では正直きつい。やっていられない気持ち」とも語った。MRJでは、三菱重工の底力が問われる。

(柿沼 茂喜 =東洋経済オンライン)

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